脳卒中の救急医療を考えるシンポジウムが31日、横浜市中区桜木町の日石横浜ホールで開かれた。横浜、川崎市では、多くの脳卒中患者を救える可能性がある「血栓溶解療法」(t―PA療法)に対応可能な医療機関に搬送するだけでなく、搬送から治療までの患者データを集積するなど、全国でも先駆的な体制を整備している。両市が最近1年間の実績を発表。症状の改善など一定の成果があった一方、地域間連携の重要性や啓発の課題も浮上した。
t―PA療法を行った場合、発症から3時間以内なら劇的に改善する可能性があるとされている。川崎市では治療実績のある10医療機関でつくる「川崎脳卒中ネットワーク(KSN)」が市消防局と連携。救急隊がt―PA適応可能性のある患者をKSN病院に搬送する体制を全国で初めて導入した。横浜市では市健康福祉局が搬送先医療機関として募った31医療機関に搬送する仕組み。
川崎市では昨年度、KSN病院に搬送された552例のうち、t―PA療法を実施したのは約15%の86例に上り、全国に比べて高水準という。治療後、就業復帰可能レベルまで改善した患者は30%を超えた。死亡は2例あったが治療の副作用が原因ではないという。
また、症状判明から病院に到着するまでの時間は昨年度下半期は約30分で、同上半期から半減。KSN事務局で聖マリアンナ医科大学の山田浩史医師は「一定の成果がある」と強調しつつ、t―PA適応可能性患者の約10%が横浜市内へ搬送されていることから「両市でデータを共有することが重要」と課題も挙げた。
横浜市では昨年度、31カ所の医療機関に搬送された患者のt―PA実施率が約13%(177例)。約30〜40%の患者が就業復帰可能レベルに改善する効果が見られた。死亡者は約10%を占めた。
一方、t―PA適応可能性患者の約15%が、時間帯などを理由にt―PA療法ができない病院に搬送されている実態が判明。市消防局救急課の吉田茂男さんは「患者家族からかかりつけ医への搬送などの強い要望もある」と打ち明け、「市民にもt―PAの効果や搬送システムを理解してもらうことも必要」と話した。
また、国立病院機構神奈川病院の齋藤良一医師が湘南地区の搬送状況などを報告した。
救急疾患ながらも「発症から3時間」というタイムリミットがあるのが課題ですね。しかしそれでも劇的な効果があるのならばやるべきでしょう。川崎市というと聖マリアンナ医科大学が中心にやっているのでしょうけれども、そのデータを共有しうまく生かすことでその地域の脳梗塞患者の社会復帰率を大幅に上げることができると思われます。