「子どもたちに、医療の素晴らしさを実感してもらいたい」−。七月二十六日に金沢大病院で開かれた子ども手術体験学習会。医師不足、偏在が社会問題となる中、企画した同病院心肺・総合外科の渡辺剛教授は「医師自ら小中学生に手術現場を伝えることで、志を持って医療の世界に入ってくる若者を増やしたい」と話す。後進の育成へ、医師側からの発信も注目されている。
電気メスや超音波メス、自動縫合器を実際に使ったり、内視鏡手術をテレビモニター上で疑似体験したり。事前に申し込んだ中から選ばれた二十四人の小中学生は、国内に十数台しか導入されていない最新鋭の手術ロボット「ダ・ヴィンチ」の操作も体験した。
学習会は渡辺教授が全国各地で実施し、金沢では四回目。渡辺教授は「外科はつらい、見合った対価がもらえない、リスクが高いというイメージが先行している。命を救うという外科医の醍醐味を少しでも感じてもらえたら」と趣旨を語る。
学習会では、肺がんに対して背中からおなかまでを切る約十五年前の開胸手術と、体に三、四カ所穴を開ける現在の内視鏡手術の映像も視聴した。リアルな現場を知ってもらおうと、生々しい手術映像も見ながら、同外科の小田誠臨床教授が解説。「僕も小さいころ、血を見るとぞっとしていたが(慣れるので)問題ない」と語りかける場面もあった。
参加した金沢大付属小四年の佐藤侑奈さんは「将来、ダ・ヴィンチのような難しい機械が使えるお医者さんになりたい」。
医師を目指すかほく市宇ノ気中三年の長原周平君は「機器の操作などいろんな練習の積み重ねで手術が成功するんだと思った。医師たちは格好良く、医者になりたい気持ちが強まった」と話した。
渡辺教授が学習会を始めたのは「医師には、医療現場で起きていることや仕事内容を社会に発信する責任があるから」。産科医や小児科医と並び、指摘される外科医不足も「医師が忙しさにかまけて将来を担う子どもたちに向けて伝える機会をつくってこなかったことの結果でもある」と厳しい。
実際、医師不足と偏在の問題は県内でも深刻だ。同大でもここ数年、外科系を志望する学生が激減。人口十万人当たりの医師数は、県内全体では全国平均より多いが、金沢市を含む石川中央圏に集中し、特に能登北部(輪島、珠洲両市と能登、穴水両町)では県平均の約半数だ。
学習会で子どもたちを指導した医師たちは「この中から一人でも将来外科医を目指してくれる人が出れば」と口をそろえる。長期的な視点での医師確保対策が求められている。
◇後記◇
「何年か前の東京の学習会に参加した子が、数年前、金沢大医学部に入ったんですよ」
渡辺教授がうれしそうに教えてくれた。医師不足、偏在の問題解決にすぐに結び付かないかもしれない。が、子どもたちの手術器具を操作する真剣な表情、集中して医師の話を聞く姿を見て、長い目での医師確保につながる試みだと感じた。
「医者になるには英語も勉強しないとね」。親や先生に言われるより、子どもたちには響いたに違いない。
スゲェ、ダヴィンチもやらせてもらえるんだ。最先端いってますねぇ。
実際、外科っていうのは凄く面白いものです。内科はセコセコとやるイメージですけれど、外科は手術がとても面白い。いくら医学が発達しても、内科だけで治療できるということにはならんでしょうね。外科があってナンボ。これだけ医学が発達した現代においても、外科でスッパリ治すということは多いです。
昔と違って外科が不足している最大の原因は、医学生のモチベーションの大きさによるのではないでしょうか。親の病院を継ぐとか、開業するとか、そういう人は外科に行っても意味ないですもんね。心臓外科をやって循環器内科に行くとか、消化器外科をやって消化器内科に行くとかなら分かりますけれど。
まぁそんなこんなで、この受験戦争が招いた弊害といっても過言ではないと思います。もし偏差値ではなく純粋に医学をやりたい人を集めたら、半数は外科に入るような感じはありますね。間違いなく。