旭川医科大内科学講座の水上裕輔講師らは、マウスを使った実験で、骨髄細胞の移植によって、がん細胞周辺の血管の機能を修復・再生する技術を開発した。これにより抗がん剤の供給路が確保され、治療効果が高まり、膵がんなどの難治性がんに対する新しい治療法として期待できるとしている。現在、ヒトへの臨床応用を目指した研究体制を整備中。研究の成果は米医学誌「Cancer Research」のオンライン版に掲載された。
7月13日に東京都内で記者会見した水上氏の説明によると、難治性がんでは、がん細胞周辺の血管の多くが機能していないため、抗がん剤を投与しても細胞に十分に行き渡らない。また、酸素の少ない環境に置かれたがん細胞は、抗がん剤などの外的ストレスに耐える力を強め、高い悪性度を得ているという。
そこで、水上氏らは、自然に膵がんができるように遺伝子改変したマウスに、血管を安定化させる働きを持つ骨髄細胞を移植した。その結果、血管が修復・再生されたことを確認した。
癌そのものを攻撃する技術ではなく、癌に抗がん剤がいきわたるよう、血管を新しく作ってやる技術。これが成功すれば、今まで以上に化学療法の効きが良くなることでしょう。手術も出来ず、化学療法しか効果のないような難治性癌に対しての臨床応用に期待です。