厚生労働省指定難病(特定疾患)の潰瘍性大腸炎は、免疫細胞が分泌するタンパク質の一つを増やすと大腸の粘膜を保護する物質が作られ、症状を改善できることが、浜松医科大第一内科の杉本健助教(42)と米ハーバード大の共同研究で分かった。杉本助教は炎症部分にだけ、このタンパク質を増やす方法も開発しており、新しい治療法につながると期待される。
杉本助教は、自然に潰瘍性大腸炎を発症するマウスの大腸で、タンパク質のインターロイキン22(IL−22)と結合する受容体が多く存在することを発見。IL−22と大腸炎の関係に注目した。
実験でマウスの大腸のIL−22を増やすと、受容体と結合して細胞内にある情報分子STAT3を活性化した。STAT3は、粘膜を保護する働きがある物質のムチンを作る杯細胞を増加させ、できたムチンによって症状は改善された。逆にIL−22を中和することによりSTAT3を抑制すると、症状は悪化した。
杉本助教はこれらの実験からIL−22、STAT3、ムチンと、症状の関係を解明。IL−22で症状を改善できることを示した。
潰瘍性大腸炎の治療法は現在、抗炎症剤や免疫抑制剤で炎症を抑えるのが主流。これに対し、IL−22の働きを生かし、粘膜を保護することで症状を抑えるのは、まったく新しい考え方だ。
IL−22は、腸以外では別の働きをしており、単に与えただけでは別の臓器に副作用が出る恐れもあるが、炎症部分にだけIL−22遺伝子を導入する方法も開発した。
杉本助教は「ヒトでもマウスと同じであることを確認し、遺伝子導入の倫理的課題を解決した上で、新しい治療法につなげたい」としている。
滋賀医科大大学院の安藤朗教授(消化器免疫学)の話
われわれもIL−22の発現が潰瘍性大腸炎の病変粘膜で増強していることを見いだしていたが、IL−22が何をしているのか分からなかった。この研究はIL−22の機能を明らかにしただけでなく、局所投与による効果を確認し、将来の臨床応用への可能性を示した点が画期的だ。
IL、インターロイキンは多くの種類があり、それぞれに特有の作用があります。今回のようにいまだ作用が分かっていないものもありますが、やはり何らかの働きをしているんでしょうね。IL−22も、今までは何でこんなもんあるのかわかんない、という状態だったようです。
しかし粘膜保護作用があることが分かった、と。すなわち、治療に使えるのではないか、と。こうやって臨床医学は発達していくのです。潰瘍性大腸炎という難病の患者数は、難病の中でもかなり多いほうで、苦しんでいる方は大勢います。彼らが問題なく日常生活を送れるようになるための第一歩となる研究かもしれません。
学術秘書
池田です。
日テレ、特別報道番組を放送へ
https://www.ntv.co.jp/
※ムチン騒乱とは:
http://kankan2025.jp/#statement
では。
この件に関するお問い合わせ先:
NOKYOKO NEWS NETWORK(NNN)
読売新聞東京本社
〒100-8055
東京都千代田区大手町1-7-1
電話:03-3242-1111
https://info.yomiuri.co.jp/contact/index.html