慢性骨髄性白血病の新薬候補物質を佐賀大学医学部の木村晋也教授(48)=血液内科=らの研究グループが発見した。従来の治療薬で効かなかった変異性のがん細胞を抑え、生存率を高める効果を動物実験で確認。慢性期の難治性患者を救える特効薬の開発につながるとして、米国の血液学専門誌「Blood(ブラッド)」で発表した。
研究グループは木村教授と京都大医学部付属病院の前川平教授(57)、英国の医療ベンチャー企業「アステックス」。
慢性骨髄性白血病は、血液細胞のもとになる造血幹細胞の遺伝子異常で起きる病気。がんタンパク質が発生し、がん化した白血球が増殖する。年間で10万人に1・5人の割合で発症している。
がんタンパク質に結合して活動を抑える分子標的薬「グリベック(イマニチブ)」が2001年に登場し、生存率は飛躍的に上がった。しかし、「T315I」と呼ばれる遺伝子変異でグリベックへの耐性ができた場合、後発の治療薬でも利きにくく、骨髄移植をするしかなかった。
木村教授らは、抗がん剤や難治性の血液疾患の新薬としてアステックスが開発を進めていた低分子化合物「AT9283」に着目。ヒトの白血病細胞を免疫不全のマウスに移植し、この物質を投与して実験した。その結果、「T315I」タイプのがん細胞の活性や増殖を極めて低濃度で抑制できることを突き止め、マウスの生存期間を延ばすことに成功した。
臨床試験はまだ、毒性を調べる第一段階だが、木村教授は「難治性患者を救える可能性を秘めている」として実用化を目指し、「従来の薬剤と効果的に組み合わせて、短期間で治す方法を確立したい」と話す。
これ結構画期的です。
そもそも白血病などの、血液内科ジャンルの病気の難しいところは、治療薬が限られているという点もあります。固形癌ならば、取れれば外科的に、取れなければ放射線や化学療法といったチョイスがありますが、血液内科ジャンルは基本的に薬が武器です。武器のレパートリーが増えれば、個々の白血病に対抗することもできるでしょう。