離島の医療環境を守ろうと、与那国町は独自の制度を整備し島にたった1人の医師を支援している。町が代診医を招いて休んでもらうことで、24時間365日気が休まらない離島の医師の待遇を改善する取り組みだ。かつては短期で医師が入れ替わることもあったが、町の支援が奏功し、現在の花村泰範医師(48)は10年目を迎えた。
人口1600人の与那国町で唯一の医療機関、町立与那国診療所に花村医師が赴任したのは2001年6月。当時は医師2人態勢だったが4年半後に1人退職し、募集したがなり手がいない。町の財政難もあり、そのまま1人態勢になった。「仕事量は特別多くはない。ただ、いつ患者が発生するか分からないし、すべて1人で対応しないといけない」と花村医師。
布団に入っても携帯電話は手放せない。自由に酒を飲むことも、学会などで島を離れることもできない。町立のため県立病院からの代診医派遣もなく、花村医師1人に島の命がのしかかった。
勤務状況を改善しようと、町は06年6月から地域医療振興協会(東京)を通し代診医の派遣を開始。毎月1度、代診医が月曜朝から土曜朝まで5日間勤務し、花村医師が完全に休めるようにした。花村医師は「趣味の釣りに行けるし、気分転換ができる」。環境を整えたことで、1年や数か月など短期間で交代した医師が多かった中、花村医師は10年目を迎えた。
診療に訪れた30代女性は「ずっと同じ先生に診てもらえて安心感がある」と信頼を寄せる。
全国各地から医師を呼ぶため、往復約20万円の交通費と宿泊費、そして日当など負担は大きい。それでも糸数永久町診療所班長(49)は「医療が整備されなければ島に人が住めない。まず第一に医師が働きやすい環境を整備することが島の未来にもつながる」と独自の制度を維持する意義を強調した。
素晴らしいです。
こういう僻地医療に対して、医師が勤めやすい環境を町全体で整えているところが非常に好印象です。
結構こう、僻地医療とか離島医療とか、問題になったりしていますけれど、正直言って、「環境が悪いから医師が来ない」という点も大きい。環境といっても都会ではない、という意味ではないのです。要するにそこにいる人たちが、医師を受け入れるのかどうかという問題。医者はいて当たり前、働いて当たり前、といったスタンスで田舎的な疎外感をいつまでも持ち続けているようでは、せっかくきた医師も半年か1年で嫌になって出てしまいます。
医師は患者を治すことに全力を注ぎ、その医師も一人の人間であり一人の町民であることを町ぐるみで認識してサポートすることが、僻地医療を成り立たせる上で大事なことだと思います。それが出来ずに医師不足だと嘆くのは、町全体の怠慢に他ならないとすら思います。