富山県射水(いみず)市の射水市民病院で平成十二年から昨年までに、外科部長の男性外科医(50)に人工呼吸器を取り外された同県内の男女七人の患者が相次いで死亡していたことが二十五日、分かった。同病院は七人のうち六人は患者本人の直接の同意がなく、家族の同意だけだったことを明らかにした。外科部長は「(少なくとも一人は)自らの手で呼吸器を外した。患者のためにやった。尊厳死だ」と説明しているという。富山県警は、複数の患者が、自らの意思に関係なく「安楽死」させられた疑いがあるとみて殺人などの容疑で捜査に乗り出した。国内では過去最大の安楽死事件に発展する可能性もある。
この日午後、記者会見した麻野井英次院長は「個人的には安楽死や尊厳死ではなく、延命の中止と思っている。犯罪かどうか分からないが、道義的に問題があると思う」と述べた。射水市や同病院によると、亡くなった七人のうち六人は、患者本人の直接の同意はなく、一人は家族を通じて本人の意思を確認した。
■「本人意思」難しい証明
七人の入院患者の人工呼吸器を取り外した射水市民病院の外科部長の行為は、「合法的な安楽死」と認められるための四要件を満たしていないとみられ、富山県警が立件する可能性が高い。捜査の進展は、安楽死論争に一石を投じる可能性もある。
平成七年三月の東海大病院事件判決で、横浜地裁が示した安楽死の要件は(1)死期が切迫している(2)耐え難い苦痛がある(3)苦痛除去・緩和の手段がない(4)本人の意思表示がある−の四つ。
病院側の説明などによると、今回のケースでは四要件のうちでも、特に重要な(4)の「本人の意思表示」を、亡くなった七人のうち六人までが満たしていなかった。この要件をめぐっては、「患者本人の意思を推定させる家族の意思」も含まれるとされるが、六人については「家族の意思」があっただけだった。
家族側にすれば、「苦しむ姿を見たくない」「早く楽にさせてあげたい」という気持ちもあるだろうが、仮にこうした事例が放置されるとすれば、介護疲れや金銭的理由などで家族の「安楽死」を依頼する悲劇にもつながりかねない。
家族を通じて本人の意思があったとされる一人についても、明確な意思表示だったのかを証明するのは難しい。
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昨日は尊厳死に関して患者側について書きました。
参考:人間が、人間らしく死ぬ権利
この事件は、医者側の暴走によって起こったことだと思います。勿論医者は、患者を「助ける」意味で人工呼吸器を外したのだと思いますが、それは尊厳死ではありません。
人工呼吸器をつける前に、「つけたら外せない」という事実が患者本人と家族に伝わっていたのでしょうか?インフォームドコンセント(十分な説明と同意)を十分に行い、理解を得る必要があったと思います。
そうすれば、人工呼吸器を付けることが「患者の同意」で、それを外すのにも「患者の同意」が必要となってくるわけです。それなのに患者の同意を得ずして医者がそれを外してしまうのは、患者の意思、ひいては患者の命そのものを軽視しているとみなされても仕方ないのではないでしょうか。
勿論、患者側からすれば苦しくなるから人工呼吸器をつけたいと思い、後になって「こんなはずじゃなかった」と思ったりすることはあると思います(何せ「初めてそういう状態になる」わけですから)。そういう時に、患者本人が意思を伝えられるのなら、人工呼吸器を外すことができる、そういう法律も必要だと思うのです。
こういった事件がおきない限りちっとも法整備が進まないので、この機会に少しでも社会が動いてくれればいいかな、とも思います。人工呼吸器の問題には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などに関しても挙げられますし、結構その使用率は高いですからね。もしかしたらこの医師も自分を犠牲にして…って考えすぎですかね。
書籍:人工呼吸器をつけますか?―ALS・告知・選択
「富山の射水市民病院のニュース」に関するクイズを作りました。
「尊厳死と安楽死。ふたつの違いがわかりますか?」という記事です。
問題は、状況を設定し、もしあなたが医師だとしたら、どんな行動をとるかを問います。
回答の選択肢が5つあります。
答えは→ http://q-q.at.webry.info/200603/article_94.html
他にも500問ほどのクイズがあります。退屈で死にそうな折りにどうぞ。
(ご迷惑でしたら、お手数ですがコメント、TBの削除をお願いします)
あぁぁぁぁぁ…
めっちゃ悩みました。笑
そして決断して見たら答えと違いましたね。
でもその「答え」に納得しました。
いやはや、倫理面での問題は難しいです。
どうしても人間の感情が絡んできますからね。