鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が細胞に取りつくための手がかり(受容体)に使う分子は、人間では主に肺の奥の細胞に存在することを、鳥取大鳥由来人獣共通感染症疫学研究センターの新矢恭子助教授と東京大医科学研究所の河岡義裕教授らのグループが見つけた。
河岡教授は「鳥のウイルスは人の肺の奥で増え、そのためせきなどで体外に排出されにくく、他の人にうつりにくいのだろう」と話している。23日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。
新矢助教授らは、肺などを切る手術を受けた日本人8人について、切り取った組織を分析し、それぞれの受容体が人体のどの部分に分布しているのかを調べた。
その結果、人間のウイルスが使う受容体は、鼻の粘膜や咽頭(いんとう)、気管支など、口や鼻に近い部分にあった。ここで増えたウイルスは、せきなどで容易に外に出て、他人にうつるとみられる。
ところが、鳥のウイルスが使う受容体は、鼻の粘膜などにはほとんどなく、気管支の先端部や、さらに奥に入った肺胞だけに存在していた。
河岡教授によると、肺の奥は比較的温度が高いため、鳥のウイルスの増殖に適している。一方で鼻や口の近くは温度が低く、たとえ鳥のウイルスが取り付いた場合でも増殖はしにくい。
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なるほど!!まさに目からウロコです。鳥のウイルスは「鳥の体温でちょうど増殖する」んですもんね。ちなみに鳥の体温は40〜42℃だそうです。要するに人間の鼻や口ではせいぜい36〜37℃だから増えるわけないじゃん、ということです。
ところが。最も温度が高いであろう部分に、高温でしか増殖しないはずの鳥ウイルスの受容体があったんですね。それが気道の最深部、肺胞です。確かに咳でウイルスを外に出しづらいでしょう。いやぁしかし…肺胞で増殖するとは…。世間があれだけ騒いでも正直なところ危機感全くなかったのですが、この記事読んでヤバイかもと思うようになりました。
参考:鳥の体の構造
ビジュアル生理学-呼吸器-