出産や育児で離職した女性医師の復帰を手伝う岡山大病院(岡山市北区鹿田町)の復職支援プログラムが3年目を迎え、成果を挙げている。医療技術の再教育や女性医師同士のネットワーク構築で、これまでに35人が職場復帰。深刻化する勤務医不足の解消につながると期待されている。
「キャリアを深めるか、子育てに専念するか。二者択一しかないと考えたこともある」。約1年3カ月の出産・育児休暇を経て約1年前、同病院産婦人科に復帰した清水恵子医師(36)は振り返る。
2008年から実施された女性医師を対象とした特別採用枠で復職。緊急時の呼び出し、当直などが原則免除され、勤務時間は週32時間以内で3パターンから選ぶことができる。
現在、週3日フルタイムで同病院の外来や手術をこなす。勤務時間の短縮で以前より収入は減ったが、「これなら育児をしながらでも働ける。選択肢が増えありがたい」。
国の統計によると、全国の医師数(08年末現在)は約28万6000人で、うち女性は18・1%の約5万2000人。年々増加傾向にあり、29歳以下では36・1%を女性が占める。591人が勤める岡山大病院も28%が女性だ。
ただ、20〜30代は出産・育児などで離職し、そのまま退職を余儀なくされるケースが多く、近年の医師不足の要因の1つとされる。支援プログラムはこうした人材を掘り起こし、“即戦力”確保を進めるとともに、激務に追われる同僚医師の負担軽減も狙う。
同病院は07年、文部科学省の財政支援事業を活用し、取り組みを始めた。プログラムは現役時代の勘を取り戻すための医療技術講習会と、女性医師同士で仕事や将来の悩みを相談・助言し合う支援ネット作りが柱。
講習会は数人単位で行い、患者の容体急変時を想定した訓練などを月1回ペースで開催。2カ月に1回程度の支援ネットのミーティングには毎回20人以上が集う。
「いったん現場を離れると孤立しがち。知識や技術を維持できるか、不安もある」。夫の転勤で離職後、復帰した久田恭子医師(32)。「キャリアを積みたいと思う私たちの背中を押してくれる制度」と評価する。
一定の成果を挙げつつある復職支援プログラムだが、今後は岡山大病院以外にどう波及させていくかが課題。医療関係者が「医療界全体の労働環境改善につながる」と口をそろえるように、こうした取り組みは大学病院以上に人材確保に頭を痛める地域の病院で必要とされている。
ネックとなるのは資金確保。3年間で約5700万円あった国の財政支援は本年度で終わる。同病院の森田潔院長は「女性医師の離職は社会にとっての損失。病院独自に取り組みを続けるが、負担は軽くない。国などの継続的な支援も必要」と訴える。
短時間勤務制度など、きめ細かい女性医師支援策で全国的に注目される大阪厚生年金病院(大阪市)の清野佳紀院長(岡山大名誉教授)は勤務環境改善へ向け、主治医制度からチーム医療への移行、地域の病院・開業医との連携強化の必要性も指摘。「地域が一体となった取り組みが重要」と提言する。
良いモデルケース。
そして現代の女性医師や医学部生は、出産などを考慮した場合、岡山大学病院で働きたい、と思うはずです。
やはり最終的にネックとなるのはお金、ですかね。医師不足解消のためにも、国が補助してくれると大いに助かるんですが。医師の全人数を上げるよりも、今いて離職している医師をサポートするほうが即戦力になりますしね。