大阪大は6日、心臓の弁が開きにくく血液を十分送り出せない大動脈弁狭窄症患者の弁を、カテーテルと呼ばれる細い管を使って人工弁に置き換える手術に国内で初めて成功したと発表した。手術を受けた大阪府茨木市の市川良夫さん(91)は病院内で補助器具を使って歩けるようになるまで回復した。
阪大病院心臓血管外科の沢芳樹教授らのグループが10月6日、市川さんの心臓にカテーテルを入れ、大動脈弁を押し広げた後、ステンレス製の枠と人工弁を大動脈に装着した。同様の手術は欧州などで約7千例が行われているが、国内では初めて。
太ももなどから血管にカテーテルを差し込んで人工弁を入れる新手法は患者負担が少なく、従来は手術を断念していた患者にも適用可能になった。阪大病院では30日にも、大阪府内在住で合併症のあった81歳女性にも国内2例目の手術を行い、予後は良好という。
沢教授は「これまで治せなかった患者を治せる手術で、今後の発展が期待される。国による迅速な承認が望まれる」としている。
大動脈弁狭窄症は高齢者に多い病気で、病状が進むと息切れなどの症状が出て、悪化すれば心不全などにつながる。自覚症状が出てからの余命は1年程度だという。
国内では年間8千〜1万人が人工弁置換手術を受けているが、現行の手法では胸を切開し心臓をいったん止めるため、重症者や合併症患者には負担が大きい。手術を受けられない患者は1万人以上いるとされる。
開胸手術というのは身体への負担がかなり大きいので、弁を置き換えなければいけない手術といえど患者さんの状態によっては実行できないこともあります。
脚の付け根からカテーテルを入れる手法ですと、胸を開かず、心臓まで細いカテーテルを通すだけなので、かなり負担は軽減されるでしょう。
重症だったり、胸を開いて弁を置換したほうがいい場合もありますが、カテーテルで弁置換ができそうなら、患者さんの状態によって2つの治療選択ができるわけです。