東京女子医科大と順天堂大が新しい手法の生体腎移植を実施したところ、移植後の拒絶反応を抑えるために患者が飲み続けなければならない免疫抑制剤が通常の4分の1の量に減らせ、近く使う量をゼロにできる見込みであることがわかった。免疫抑制剤の副作用が避けられる治療法として期待される。
この治療法は、東京女子医科大の寺岡慧教授(腎臓外科)と順天堂大の奥村康教授(免疫学)らが大学の倫理委員会の承認を受け、昨年8月以降、20代から50代の希望者男女計9人に実施した。
移植手術の前日に、患者と臓器提供者の双方から採血し、それぞれの血液から、免疫に関するリンパ球「T細胞」を抽出。両者を特殊な抗体とともに混ぜ、2週間培養してから、移植を受けた患者の体内に戻した。
その後、患者の様子を見ながら免疫抑制剤を減らしていくと、早いケースでは、免疫抑制剤が通常必要な量の半分から4分の1にまで減らせた。このうち1人は合併症が出たため減量を中断したが、継続中の8人に拒絶反応は起きていない。免疫抑制剤を使うと出やすい特有のウイルス感染症も確認されていない。
副作用は一時的な脱毛だけで、このうち1人は11月中にも免疫抑制剤を中止できる見込みという。臓器提供者が親子やきょうだいのほか、配偶者のケースでも、免疫抑制剤の減量は可能だった。国内で生体腎移植は年間1037件(07年)行われており、実用化できれば影響は大きい。
臓器移植では、本来は細菌やウイルスから体を守る免疫が、移植された他人の臓器を「異物」とみなして攻撃する拒絶反応が起きる。これを抑えるのが免疫抑制剤だが、糖尿病や腎障害などの副作用がある。
これまで、移植後にまれに免疫抑制剤が不要になる「免疫寛容」という現象が自然に起きることも知られていたが、しくみは不明だった。新治療法では人工的に免疫寛容を起こせると期待される。新手法は肝臓移植などにも応用が可能と考えられる。
免疫トレランスを人工的に起こすことで、相手の臓器が自身の体、そして相手のリンパ球などが「馴染む」ようにできるようです。
これが出来れば脳死臓器移植においても免疫抑制剤をあまり用いずに済むんでしょうか。大きなメリットを抱えたこの研究、全国で実用化されることを願っています。