胚の代謝を評価することによって、体外受精(IVF)に成功する確率が最も高い胚を特定できる可能性のあることが、新しい研究で示された。
米エール大学医学部(コネティカット州)准教授のEmre Seli博士によると、IVFで子宮に戻す胚を選ぶ際の現行のプロセスはほぼ主観に頼ったものであり、運によって失敗に終わることもあれば多胎妊娠になることもあるという。「われわれの目標は、成功の確率が最も高い胚を正確に特定し、妊娠率を低下させずに移植する胚の数を減らし、多胎妊娠の可能性を下げることである」と同氏は述べている。
今回の研究では、使用済みの胚培養液のメタボロミック(細胞内の全代謝物質の網羅的分析)プロファイル(metabolomic profiles:培養液内での胚の活性を示す独特の化学的特徴)を検討。ヨーロッパおよびオーストラリアの4施設で処置を受けた女性について調べた結果、非侵襲的な胚培養液のメタボロミック評価に基づく生存能力スコアが、妊娠結果に影響を及ぼしていることが判明した。この研究は、米Molecular Biometricsモレキュラー・バイオメトリクス社との提携により実施され、アトランタで開催された米国生殖医学会(ASRM)年次集会で発表された。
「米国では年間12万5,000サイクルを超えるIVFが実施されており、今回の知見は重要な意味をもつものだ」とSeli氏は述べるとともに、「IVFによる多胎妊娠率の高さは、未熟児出生による死亡リスクや生涯にわたる障害リスクなど、公衆衛生に重大な影響を及ぼしている」と指摘している。
不妊に悩む夫婦は10%にも及ぶとされています。
体外受精の技術が向上すれば、多くの不妊症に悩むカップルの負担が大幅に減るでしょう。