東北大の阿部高明教授と慶応義塾大の曽我朋義教授らは、悪化すると人工透析が必要になる慢性腎臓病の早期治療に、高脂血症の治療で広く使われている薬「スタチン」が有効であるとの研究結果をまとめた。ラットの実験で働きが弱くなった腎臓が回復することを確かめた。東北大医学部付属病院で患者を対象に有効性を見極める臨床研究を始めた。
腎臓のほとんどを摘出して血中の不要物質を尿に送り出す働きを弱めたラットでスタチンの効果を調べた。スタチンを投与した5匹は投与しなかった5匹に比べ体内に残る不要物質の量が平均して半分以下になり、腎臓がより働いていた。不要物質は毒性があり、体内に長い間たまり続けると腎臓の機能が弱まる。
慢性腎臓病の患者は国内で1330万人と推計され、悪化して人工透析を受ける患者も増加の一途で27万人いるとされる。阿部教授は「腎臓病の早期患者では副作用は起きにくく、症状の悪化予防に効果が期待できそうだ」と話している。
今までは腎臓という臓器は少し軽視されてきた感じはあります。
腎臓の機能をなかなか評価しづらかったり、症状として現れにくいというのはありますが、腎臓の機能がだんだん弱まっているにもかかわらずしっかりとした治療を受けられずに、腎不全状態となって透析が必要になったりすることも。
そこで新しい概念として、慢性腎臓病というものを作りました。腎臓のメタボリックシンドローム版のようなものです。国内にかなりいる、腎機能の低下した人たちをスクリーニングして、段階別に分け、悪化するまえに治療しようというもの。腎機能が低下しすぎる前に治療をすることで、透析導入を遅らせることもできるようになるとされています。