富山大医学部第一内科の戸辺一之教授のグループは、肥満した内臓脂肪にある悪玉細胞が炎症して、代謝疾患を引き起こすメカニズムを解明した。糖尿病や高脂血症などの改善に有用である可能性が示された。
これまでの研究で、血糖値を抑えるインスリンの働きを弱める物質(炎症性サイトカイン)が、内臓脂肪組織からつくられることが分かっていた。
研究グループの薄井勲助教と藤坂志帆医員らは、内臓脂肪組織にある悪玉の炎症細胞(マイクロファージ)がこの物質をつくり、代謝疾患の発症に関係していることを突き止めた。
実験では、(1)肥満でない(2)肥満(3)肥満状態だが炎症を抑える糖尿病薬(チアゾリジン薬)を投与−の三種類のマウスを比較した。
その結果、(1)のマウスは悪玉細胞と善玉細胞の比率が一対九、(2)のマウスは五対五、(3)のマウスは三対七だった。それぞれで細胞のバランスが変化し、善玉細胞が多いと代謝の改善効果があることを証明した。
薄井助教は「肥満で代謝疾患を持つ人は炎症を抑える薬を選ぶことで、血圧やコレステロールなどに良い効果が期待できる」と話す。今後は善玉細胞の特徴を解明し、代謝の改善作用の研究を進める。
脂肪そのものが悪さをするというより、その脂肪を異物として、体の防御システムの1つであるマクロファージがそれを食べることで、炎症反応が起こったり、プラークとして沈着することが問題なんですね。
こういう基礎的なことの解明で、脂肪をコントロールすることが、代謝内分泌内科の醍醐味の1つです。内科というと循環器内科や消化器内科がメジャーですが、代謝内科は糖尿病などのエキスパート。メタボリックシンドロームと合わせてもっとも伸びる内科の1つでしょう。