金大大学院医学系研究科・再生脳外科学教室の山嶋哲盛准教授と三重大の共同研究グループは23日までに、ニホンザルの脳を使った実験で、脳梗塞やアルツハイマー病など脳疾患の原因である神経細胞死が、細胞を保護する「熱ショックタンパク質」(HSP)の損傷によって生じることを突き止めた。ヒトの脳疾患にもHSPの保護や補給が有効とみられ、新薬開発や治療への応用が期待される。
山嶋准教授らは、人工的に脳梗塞を起こしたニホンザルの脳からタンパク質を抽出。三重大と島津製作所(京都市)の協力を受けて詳細に解析した。
この結果、熱ショックタンパク質の一つである「HSP70」の損傷が平常時と比べ、10倍以上に増えていることが判明した。
HSP70は細胞内の小器官「リソソーム」から、タンパク質を分解する「カテプシン」の漏出を防ぎ、細胞が壊れないようにしている。解析結果では、HSP70が損傷を受けたことにより、リソソームが破裂して細胞成分が破壊されていた。
これまで脳疾患にはカテプシンの漏出が関係していることは知られていたが、リソソームが破裂する原因は分かっていなかった。
山嶋准教授によると、ニホンザルの脳はアミノ酸の構成がヒトと極めて近く、共通性が高いと考えられる。HSP70の損傷と脳疾患の因果関係が明らかになったことで、酸化からHSP70を守る抗酸化剤の活用や、HSP70を使った医薬品、健康食品の開発も期待できるという。
研究成果は23日までに、オランダの医学雑誌「プログレス イン ニューロバイオロジー」の電子版に掲載された。山嶋准教授は「脳疾患の多くにかかわる神経細胞死の全容解明に大きく近づいた。一日も早い臨床応用を目指したい」と話した。
九州大生体防御医学研究所の中別府雄作教授(脳機能制御学) 今回の研究成果によってHSP70の酸化を制御できれば、神経細胞死を防ぐことができると考えられる。分子標的の一つが判明したことで、創薬などへの活用も期待される。
蛋白質関連。
治療に役立つものですね。