免疫や神経の形成などにかかわる重要なたんぱく質を細胞の表面につなぎ留めるひも状の組織が、たんぱく質を細胞の内側から表面に運ぶ際の出荷調整役をしていることを、大阪大の木下タロウ教授(糖鎖生物学)らが突き止めた。この組織の欠損が原因で起きる難治性貧血や静脈血栓などの原因解明につながると期待される。
細胞の表面では、生命維持に必要な約150種類のたんぱく質が、糖鎖と脂質でできた「GPIアンカー」と呼ばれる組織で固定されている。たんぱく質を錨(アンカー)で細胞膜に係留しているような構造だが、ロープに当たる糖鎖がなぜ複雑な構造をしているのかは、これまで未解明だった。
GPIアンカー型たんぱく質は細胞内の小胞体という器官で作られた後、袋状の「輸送小胞」に乗り、ゴルジ体経由で表面に輸送される。木下教授らはまず、輸送が滞る異常があるハムスターの細胞から原因遺伝子を特定。この遺伝子は、糖鎖の真ん中から枝分かれした側鎖2本のうち1本を外す酵素を作るが、遺伝子が機能せずに側鎖が2本のままだと輸送が遅れることが明らかになった。
糖鎖の構造変化が輸送の合図になり、出荷を調整していると考えられ、木下教授は「輸送が遅れたり過剰に活性化したりすることで、様々な疾患が引き起こされている。酵素を制御できれば新たな治療法につながる可能性がある」としている。研究成果は、米科学誌セルに発表した。
今年もあと2ヶ月ほどとなりましたが、昨年に続いて今年も、新しいタンパク質が発見されたり、その蛋白質と疾患との繋がりを見出したりしました。
その蛋白質の、より根本的な研究ですね。蛋白質がどう移動するか、などを解明することで、今まで難病とされていた疾患や難治だった疾患も治療法をみつけられるかもしれません。
アメリカの、セルに載るあたりが一流の研究であることを裏付けています。