生きているブタの胃の4分の1を切り取って作った大きな穴を、薄いスポンジ状の人工シートでふさいで胃壁を元通りにする実験に、埼玉医大の宮沢光男教授(消化器外科学)らが27日までに成功した。
シートが土台となり、周囲の細胞がスポンジの細かい穴に入り込んで胃が再生するという。シートはその後溶けてなくなった。 宮沢教授らは、このシートで血管などを再生させる方法を既に開発しているが、胃でこれほど大きな部分の再生は初めてという。人間に応用できれば、胃がんの手術で切除した部分を再生させ、患者の生活改善に役立つことが期待される。
再生医療は、新型万能細胞のiPS細胞などを使った方法が注目されているが、目的とする細胞を作るだけでなく、立体的な構造にして機能させることが大きな課題になっている。
宮沢教授らは、奈良県立医大の筏義人教授(医工学)が開発したシートを利用した。このシートは生体に吸収、分解されやすい物質でできており、厚さ1ミリ。ブタを使った実験で、胃から縦、横各6センチの胃壁を切り取って、そこにシートを3枚重ねて縫い付けた。
ブタは食べる量が減らないままで、シートには周囲から徐々に細胞が集まった。途中で潰瘍ができたがやがて消え、10週間後、シートも完全に溶け、胃は元通りの形になった。粘膜や筋肉などの胃の層構造が形成されているのも確認した。
胃の再生には、さまざまな細胞になる可能性がある骨髄由来の細胞が関与しているとみられ、仕組みの解明を進めている。
宮沢教授は「このシートは人間に対する毒性はないと確かめており、臨床試験ができれば実用化は近い。十二指腸、大腸、食道などでも、良い実験結果が出つつある」と話している。
何じゃこりゃ。凄いですね。革新的といってもいいほど。
胃がんのときの手術になると、胃を切除しなければなりません。胃がんの大きさや浸潤具合によって、切り取る範囲が広がるのですが、胃の容積が小さくなってしまうと様々な不具合が起こります。食物の入る量が少なくなるほどだけではなく、例えば糖分がドカッと腸に入ることでダンピング症候群を来たしたりすることもあります。
そういった合併症を克服するだけでなく、胃をほぼ元通りに直してしまう、まさに再生医療の真髄。