北大大学院医学研究科皮膚科学分野(清水宏教授)の阿部理一郎講師(40)らの研究班が、風邪薬をはじめとする医薬品の服用などでごくまれに起こる重症薬疹を、血液検査で発症初期に通常の薬疹と見分けることが可能な、診断の指標になるタンパク質を世界で初めて突き止めた。6日付の米内科学会誌で発表する。
グラニュライシンというタンパク質。研究班はすでに、患者の血液中のグラニュライシンを測り簡便に診断できるキットの開発に着手。完成すれば、発症メカニズムが未解明で早期診断法の開発も進んでいない重症薬疹の後遺症の減少や死亡率の改善が期待される。
研究班は、スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症といった重症薬疹の患者と通常薬疹患者、健康な人の計約70人の血中グラニュライシンの量を分析、比較した。
その結果、重症薬疹患者では、水疱ができる前段階の皮膚が赤くなった通常薬疹と判別がつかない発症初期に、グラニュライシンが高い値になっており、通常薬疹患者は正常値であることが分かった。
研究班によると、グラニュライシンはウイルス感染の細胞などを殺すのに必要なタンパク質。高い値の理由はよく分かっていない。
研究班は、昨年発表された、重症薬疹の水疱にこのタンパク質が多く含まれているとの海外の研究論文に注目。診断に活用できないか研究を重ねていた。
阿部講師は「早期診断に光明が見えた。キットが完成すれば、微量の血液から15分程度で診断できるようになるだろう」と話している。
のんびりしているように思われがちな皮膚科でも、命に関わるような緊急疾患は存在します。
その中でも最たるものが、薬を飲んだときに稀に起こる薬疹の中でも最も恐ろしい、重症薬疹です。
全身の皮膚や粘膜が侵されるだけでなく、高熱が出現し、目にも影響を及ぼし、失明の危険性さえあるスティーブンス・ジョンソン症候群。特別効く治療法というものがない上に診断しづらいということで今までは致死率も高かったのですが、このグラニュライシンのおかげで早期診断が可能になりそうですので、予後も良くなるかもしれませんね。