記憶や学習をつかさどる大脳の「海馬」形成に重要な役割を果たす遺伝子を、名古屋大大学院医学系研究科の高橋雅英教授(分子病理学)らが特定、24日付の米科学誌ニューロンに発表した。
高橋教授らは「統合失調症やてんかんなど、海馬の形成異常との関連が疑われる神経・精神疾患の発症メカニズム解明や新たな治療法につなげたい」としている。
高橋教授らは、血管やがんなどの細胞を活発化させる「ガーディン」という遺伝子に着目。この遺伝子がないマウスを作成したところ、周りの新しい環境に興味を示さないなど、神経症のような症状が現れた。
脳内を調べると、新たな神経細胞の成長が阻害され、海馬の「歯状回」と呼ばれる構造が正常に形成されていないことが分かった。
統合失調症は「DISC1」という別の遺伝子の異常が関連していることが既に判明しているが、高橋教授らは、正常な海馬の形成にはこの遺伝子とガーディンがともに機能する必要があることも突き止めた。
脳も遺伝子も未知数領域。1つずつ解明されることで、劇的に進歩する可能性を秘めてます。
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