特定の遺伝子の発現を抑制する「RNA干渉」と呼ばれる現象に不可欠な2本鎖RNAを作る合成酵素がヒトにも存在することを、国立がんセンター研究所の増富健吉プロジェクトリーダーらが明らかにした。RNA干渉を応用した医薬品開発や新たながん治療法の開発につながる成果。英科学誌「ネイチャー」に発表した。
RNA干渉は、遺伝子の発現調節やウイルスからの防御など生体にとって重要な役割を担っており、発見者に対して2006年のノーベル医学・生理学賞が贈られた。DNAの遺伝情報を翻訳、伝達するRNAは1本鎖で働くが、RNA干渉は2本鎖でなければ起こらない。一部のウイルスや植物では、1本鎖のRNAを鋳型にして反対向きのRNAを合成する酵素の存在が確認されていたが、ヒトを含む哺乳類ではどうやって2本鎖RNAが作られるのかは謎だった。
増富さんは、ヒトの染色体の末端部(テロメア)で、RNAを鋳型に反対向きのDNAを合成する酵素(TERT)に着目。この酵素が特定のRNAと結合すると、DNAではなくRNAを合成し、2本鎖RNAとなって機能することを実証した。
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2006年度のノーベル生理学・医学賞は「RNA干渉の発見」