妊婦は新型インフルエンザに感染・発症しやすく、重症化もしやすい。出産を迎えるまでの期間、予防や感染拡大防止に注意点がある。医療機関側も妊婦の出産時の対応策をまとめ、受け入れ準備を進めている。
「急な発熱やのどの痛み、せき、頭痛など新型インフルエンザの症状に十分注意してください」
東京都練馬区の豊玉保健相談所で開かれた妊婦対象の「母親学級」。全国的に感染が広がった九月初旬、当初予定していた妊婦体操に加え、保健師が感染予防策をまとめたチラシを妊婦に渡して、新型インフルエンザの説明を行った。保健師の伊藤可奈子さんは「妊婦さんから問い合わせもきていた」と、感染対策への関心は高い。
参加者で、来年一月に出産予定の荒木和美さん(32)は「帰宅後のうがいと手洗いを夫と徹底している。感染した人がどこにいてもおかしくないので、できることをしている」。母親学級での同様な取り組みは各地で始まっている。
【タミフルは?】
新型インフルエンザにかかると妊婦は重症化しやすい。「妊娠すると免疫機能が低下し、また大きくなったおなかに圧迫されて呼吸器機能が低下するためとされている」と日本産婦人科医会常務理事で横浜市立大付属病院産婦人科部長の平原史樹医師は説明する。
三八度以上の発熱など症状が現れたら、早く医療機関へ受診することが大切だ。抗インフルエンザ薬タミフルについて、日本産科婦人科学会は「投与された妊婦や出生した赤ちゃんに有害な副作用の報告はない」との米国の報告を基に、妊婦に使用を勧めている。
【受診は?】
同学会では、妊婦から妊婦への感染を予防するため、原則として内科など新型インフルエンザ治療を行っている医療機関への受診を勧めているが、一般病院への来院が難しい場合は、かかりつけの産科でも対応することにした。受診する際には、あらかじめ電話で連絡をし、マスクを着けて行くようにする。
【ワクチンは?】
数量に限りのあるワクチンは、国の定める優先接種の対象に妊婦も入っている。同医会は「妊娠のどの時期に接種してもかまわない」との見解だ。接種場所は、地域の医師会が医療機関のリストを作成し、国がまとめて十月中旬に公表する。接種希望者は原則、医療機関に予約して受けることになりそうだ。ワクチンは二回接種で、費用は合計約八千円と見込まれる。
出産を受ける産科側の感染者受け入れ策もまとまった。同医会が今月まとめた「新型インフルエンザ罹患(疑いを含む)の妊産婦の分娩(ぶんべん)施設における対応について」によると、感染・発症した妊婦は医療機関内で常時マスクを着用し、手洗いと手指消毒を徹底し、できるだけ移動させないようにする。
個室を使用してもらうが、それが難しい場合には常に同じスタッフが対応するなど周囲との接触の機会を減らす。
出産は、重症化していなければ一般の分娩室で行え、分娩後に室内の十分な消毒を行う。重症化している場合は「救命救急の機能のある総合周産期医療センターなどでないと対応が難しい」と平原医師は言う。
出産前七日以内に発症していた場合や、感染・発症中に出産した場合は原則一週間、母児別室にし新生児への感染を避ける。同室の場合、くしゃみなどのしぶきがかからないよう一、二メートル以上離すか、新生児を保育器に入れて対応する。この間母乳は直接ではなく、搾乳したものをあげる。
「いつ患者が出ても対応できるよう医療機関は臨戦態勢の意識が必要だ。限られた医療機関で対応するには、妊婦や家族にも協力してほしい」と平原医師は呼びかけている。
インフルエンザ、猛威をふるっています。
治療法がどうのというより、まずは手洗い、うがいによる予防です。これを徹底することが肝心です。
特に自分を守ることもそうですが、妊婦さんや免疫能力が低下している方に、自分からうつさないためにも、予防は必要です。