日本ではあまり知られていない病気だが、西欧諸国では近年、患者が増加傾向にあるとされる精巣(睾丸)のがん「精巣腫瘍」。早期には精巣の腫れ以外に痛みなどの症状がないことが多く、発見の遅れや重症化を招きやすいとの指摘もある。日本泌尿器科学会で、精巣腫瘍の診療基準となるガイドラインの作成に携わる府立成人病センターの垣本健一・泌尿器科副部長(42)に話を聞いた。
−−精巣腫瘍とはどんな病気ですか。
精巣にできるがんで、発症率は約10万人に1人前後といわれます。発症のピークは15〜35歳で、これらの年代の男性では、頻度の高い腫瘍といえます。悪性度が高く、早期から転移の危険がある病気です。
−−どんな症状がありますか。
精巣が腫れたり、硬くなるだけのことが多く、痛みや発熱を伴うケースは少ないです。転移するスピードが速いので、早期発見が大切ですが、恥ずかしさから受診を敬遠し、重症化する例も見受けられます。異常を感じたら、恥ずかしがらず、すぐに泌尿器科を受診してください。
−−原因は?
精巣が陰のうまで下りず、体内にとどまる「停留精巣」の場合は、発症のリスクが高くなるという指摘があります。母胎内でのホルモン環境などがかかわるとも言われますが、はっきりした原因は分かっていません。
−−どのような治療法がありますか。
外科手術で精巣を摘出し、転移があれば化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を行います。現在は、プラチナ製剤を用いたBEP療法と呼ばれる化学療法が標準的な療法として確立されており、転移があっても約8割の人が完治を望める状況になってきています。
一方で、BEP療法でも完治しない場合、抗がん剤の種類を変更した化学療法(救済化学療法)が必要となります。さらに化学療法後に残存した腫瘍を摘出する必要が生じることもあります。
−−病気になっても、子孫を残すことは可能ですか。
理論上は手術で片方の精巣を摘出しても、もう片方の正常な精巣が残っていれば子孫を残すことは可能です。しかし、化学療法や放射線治療の結果、精子をつくれなくなる恐れがあります。現在の医療水準では、精子保存という選択肢もありますので、治療を受ける際は主治医とよく話し合うことが大切です。
−−治療を受ける上で大切なことは?
化学療法は、精神的にも肉体的にも負担の大きい治療ですが、適切な量を適切なタイミングで投与することが非常に大切です。患者さんの数が少ない病気ですから、化学療法、放射線治療、化学療法後の残存腫瘍の摘出手術などは、治療経験の多い施設で行われることが望まれます。
あまり精巣腫瘍のことが取り上げられないのは、やはり他の癌のように激しい症状がでないこと、部位が部位だけに相談しづらいこと、あとは医学の進歩によって完治が望めることが上げられますね。
ですがやはり精巣にも癌は出来るということを一般の方にも認識してもらいたいというのはありますね。なにせ、症状がほとんどないですから。おかしいな?と思ったら、ためらわずに医療機関を受診してください。いくら完治率が高いといっても、早ければ早いほど良いです。
無痛性の腫瘍ができる、ということ以外に、出る症状として、女性化乳房が挙げられます。組織的に4つのタイプに分類されるのですが、セミノーマ、絨毛癌、奇形腫といったタイプではhCGというホルモンを分泌することがあります。もし分泌された場合、女性化乳房という症状を来たすこともあります(もちろん来たさないこともあります)。
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