厚生労働省は、国産の新型インフルエンザワクチンについて、国立病院機構で成人200人を対象に臨床試験(治験)を行う。
国産ワクチンは、従来の季節性インフル用と同じ方法で作るため、法令上は新たな治験は必要ない。しかし、効き目が弱い恐れがあるため、通常の2倍量の接種なども試み、有効性と安全性の確認を急ぐ。
インフルエンザに対する基礎的な免疫は、毎年、ウイルスの体内侵入を受けることで、少しずつ高まる面がある。このため、季節性インフルのワクチンは成人には1回の接種で効くが、大半の人が免疫を持たない新型インフルは、ワクチンの効果が低い可能性があり、2回接種を予定している。
治験では、3週の間隔で2回接種し、各段階で免疫をどのくらい獲得できたかを調べる。また、半数の100人には通常の2倍量を接種する。効果とともに、発熱や腫れなどの副反応が従来のワクチンと大差ないかどうかを確認する。
成人とワクチンの接種量が異なる12歳以下の小児についても、治験の実施を検討している。
新型インフルのワクチン接種…医療従事者を最優先へ
新型インフルエンザのワクチンを接種する際、優先順位を医療従事者、持病がある人、妊婦、小児、乳児の両親とする厚生労働省の基本方針案が31日、明らかになった。
これら約1900万人への接種が終わった後で、小中高校生、高齢者に接種する。政府の専門家諮問委員会などの意見を踏まえ、国民の意見を募集したうえで、9月中旬にも正式決定する。
死亡者や重症者の発生を減らすことを目的に、健康に重大な影響を受けるおそれがある人を優先した。
具体的には、〈1〉医療従事者100万人〈2〉持病(ぜんそく、糖尿病など)がある人1000万人と妊婦100万人〈3〉生後6か月〜就学前の小児600万人〈4〉生後6か月未満の乳児の両親100万人――を最優先接種者とし、この順で接種を実施。持病のある人の中では、小児を優先することにした。その後で小学生、中学生、高校生、高齢者の順に接種する。
年度内に国内で製造できるワクチンは、想定よりも大幅に少ない1800万人分と見積もっており、最優先接種者に使用する見通し。不足分は輸入する方針だが、治験などを実施して安全性を確認し、問題がある場合には使用しない。
新型インフル予防接種、重症の恐れ1900万人優先
厚生労働省は4日、新型インフルエンザワクチン接種についての最終方針案を公表した。必要としたワクチンは5400万人分。
医療従事者と重症化しやすい人の合計1900万人を最優先接種者とし、この中での接種順位も示した。国民の意見を6日から1週間募り、政府の専門家諮問委員会に諮った上で、9月末までに正式決定する。接種は10月下旬から始まる見込みだ。
ぜんそくや糖尿病など持病のある人の中では1歳〜就学前の小児を優先する。ワクチンで免疫がつきにくい乳児は両親に接種する方針で、当初は乳児の年齢を6か月未満としていたが、1歳未満に拡大した。
年度内に国内メーカーが生産できるワクチンは1800万人分だ。10月下旬から供給が始まり、最優先接種者に接種する。不足する分は輸入し、小中高校生と高齢者に使う。ワクチン到着は12月下旬以降になる見通しだ。ワクチンは2回の接種が必要。1回目の接種から免疫がつくまでには1か月ほどかかる。厚労省の「流行シナリオ」では流行ピークを10月上旬としており、10月下旬から接種が始まるとすれば、ピークに間に合わない可能性もある。
ワクチン優先、透析患者ら「ひと安心」
新型インフルエンザワクチン接種に関する厚生労働省の基本方針案が4日公表され、優先接種の対象となる腎臓病患者などからは歓迎の声があがった。
感染すると重症化の恐れがあるとされる腎臓病や心疾患など持病がある人たちは約900万人。全国腎臓病協議会長で、自身も週3回透析を受ける宮本高宏さん(50)は、「1人目の死者が透析患者だったので、患者は不安を募らせていた。これで安心」と喜ぶ。ただ、同省の「流行シナリオ」では、ワクチン接種開始よりも、流行のピークが先に来る可能性が高く、「国は早く接種出来るよう対応を急いで」と要望した。
臓器移植などを受け、免疫抑制剤の投与を受けている人も優先接種の対象に。その一人で京都市の中学校長、山本卓司さん(55)は、国産よりも副作用の懸念が強い輸入ワクチンに不安を抱いていた。方針案は、優先接種の対象者には国産ワクチンを使うとしており、「国産ワクチンでも腎臓がダメージを受けるかもしれないが、命にはかえられない」とやや安堵した様子だ。
全国薬害被害者団体連絡協議会の代表世話人の花井十伍さん(47)は「安全性をおろそかにしてはいけない」と呼びかける。小中高生や高齢者には、輸入ワクチンが使われる見通しで、「接種を受けるかは本人が慎重に判断すべきだ」と語った。
インフル、新規患者数1週間で14万人
国立感染症研究所は4日、インフルエンザについて、全国約5000医療機関を対象にした定点調査で、最新の1週間(8月24〜30日)の新規患者数は1万2007人で、1医療機関あたりの患者数は2・52人だったと公表した。
前週(17〜23日)の1医療機関あたり患者数は2・47人で微増にとどまった。全国の新規患者数は推計で約14万人で、前週よりも1万人ほど減った。大半は、新型インフルエンザと見られる。
新型インフル、季節性より強力…米機関発表
米国立衛生研究所(NIH)は1日、新型インフルエンザは季節性インフルエンザより感染力が強いとする動物実験の結果を発表した。秋からの本格的な流行では、新型が主流になる可能性が高いとみられる。
米メリーランド大の研究チームが、イタチの仲間フェレットに新型インフルエンザと季節性インフルエンザを同時感染させたところ、新型だけがほかのフェレットに感染し、季節性は広がりにくかった。
予防接種、本来なら全員に受けられるべきなんでしょうけれど、今までの新型インフルエンザの死亡者をみても分かりますように、腎臓が悪いとか、免疫機能が低下しているとか、そういう患者さんがかかったほうが命に関わります。弱っている人に医療を行わなければいけない医療従事者や、透析などを受けている、体の弱っている人が優先して受けるのはある意味当然といえば当然か。まずインフルエンザが流行しないように予防する意識をもって、国民全体で冬を乗り越えていきましょう。
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