「民主党が衆議院第1党となりました。おめでとうございます」
9月2日の午後3時30分から開催された日本医師会の記者会見で、唐沢祥人会長はこう切り出し、「新政権にのぞむ」という声明を発表しました。その内容は下記です。出席した記者たちの多くの関心は、従来「政権与党を支持する」と明言してきた日医が、今後、民主党支持に変えるのか、あるいはこれまで通り自民党なのかにありました。質問もそこに集中したのですが、唐沢会長は「日本医師会と日本医師連盟は違う」とし、明確なスタンスは示されませんでした。
また、「政権与党に対しては、医療の現場の声を伝えていく」としながらも、「選挙中、選挙後、この9月に入ってからも」(唐沢会長)、まだ民主党とは協議の場を持っていないとのこと。
【記者からの質問と唐沢会長の回答】
質問:これまで自民党政権が長く続いてきたが、今後、民主党を中心とした新政権になった後に、自民党とどう向き合っていくのか。何か変化が生じるのか。それともこれまでと変わらないのか。
唐沢会長:政権与党は、政権与党としての政策立案と実行という面では、格段の実現力の差がある。したがって、十二分にわれわれのスタンスで医療の現場を反映するように意見を申し上げたいと思っている。自民党与党の時代にも、私どもは2006年4月からこの体制でやってきたが、当初からできるだけ政権与党に対して申し上げてきた。われわれの意見と違うものは、できるだけ修正をお願いしたいと思っている。今後、こうした姿勢で行きたい。
質問:今、会長が「政権与党」と言ったのは、自民党のことを指しているのか。それとも民主党のことか。
唐沢会長:前段は民主党、後段は自民党に対する姿勢と変わらずに意見を申して上げていきたいということだ。
【新政権にのぞむ】
8月30日に行われた第45回衆議院議員選挙において民主党が衆議院第1党となりました。日本医師会は新政権に対して、今後、国民が真に安心できる充実した医療政策を進めることを期待しています。
さて、今回の衆議院議員選挙は、医療に関しては、地域医療の崩壊が現実化した状況を政治がどのように方向転換させるのかを問う選挙であったと言えます。
そして、今回の選挙結果は、国民一人ひとりが、医療を含めた社会保障制度をより充実したものにすることを強く求めた結果であると考えます。
政府は、国民の生命と生計を守る社会保障に対して、明確な理念を示し、国民に対し安心を保障する責務があります。
日本医師会は、このために、医療のグランドデザインの発表をはじめ様々な形で、政府に対して医療における政策提言を行って参りました。
新たに発足する政権与党に対し、国民が安心して健康な生活を送れるよう、充実した医療提供体制の確立を目指し、今後一層強力な政策提言を行ってまいる所存であります。
平成21年9月2日
日本医師会長
唐沢祥人
何十年も自民党とともに歩み続けてきた日本医師会に対して、民主党はどのような扱いになるのでしょうね。医療の崩壊は既に始まっていると思いますが、それを食い止めるためにどうするのか。国民全員で福祉に力をいれる方向にもっていくのか、従来どおり医療従事者だけに負担を強いるのか、それとも政治家・官僚も含めて医療費アップに動くのか。
民主党政権がどのようなスタンスで医療を変えていくのか、今後の動向が楽しみです。
関連
医学処:茨城県医師会が民主党支持。一方日本医師会は自民支持。
医学処:勤務医、開業医が選ぶ2008年医療界のキーパーソンは
医学処:「人の死とは?」脳死臓器移植法A案の波紋。