細菌サイズの医療用ロボットが、患者の体内に入り込んで病気を治してくれる−。SF映画「ミクロの決死圏」(1966年公開)のような医療技術が、実現しようとしている。名古屋大学工学研究科の生田幸士教授が開発した「光駆動ナノマシン」だ。光で加工し、光で動かすのが特徴で、今年2月には、世界で初めてロボットによる赤血球の解剖にも成功。さまざまな病気の治療法が、根本的に変わるかもしれない。
「このカブトムシやロボットは細菌とほぼ同じサイズです。微細な立体加工技術がナノマシンを実現しました」
顕微鏡の写真を見せながら、生田さんは語る。
物質をナノメートル(100万分の1ミリ)レベルの分解能で加工するナノテクノロジーは、主に半導体分野で発展してきた。この分野は平面加工が中心だが、生田さんは「立体を作りたい」と考えた。長年、医療ロボットの研究に携り、ナノテク応用の必要性を感じていたからだ。
精緻な立体加工を可能にしたのが、92年に開発した世界初の「マイクロ光造形法」という技術。紫外線照射で液体から固体に変化する性質を持つ光硬化樹脂に、凸レンズを通して紫外線レーザーを当てる方法で、液体樹脂内の焦点部分だけが透明に硬化する。液体部分を洗い流すだけで設計図通りの3次元構造が完成する。
開発当初の分解能は5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)だったが、その後の研究で約50倍の100ナノメートルレベルまで向上した。光造形法の利点は、光学顕微鏡程度の装置で時間も手間もかけず製造できることで、現在はナノレベル立体加工技術の主流となっている。
医療用ロボットとして動く原理は、微小世界で作用する物質のユニークな性質を利用した。
「液体の中に置いて赤外線レーザーを照射し、部品内で焦点を結ぶ。レーザーの焦点を動かすと、部品はそれに追従して動く」
レーザートラップと呼ばれ、物体が透明かつ微小な場合に初めて可能になる。これを応用することで光駆動ナノマシンが実現した。
はー。人類の歴史は地球の歴史に比べたら浅いものですが、100年前と比べて、なんという進歩でしょう。
あと10年、20年後に、このナノマシンで治療法が出来ていても何にも不思議ではありません。
抗生物質の発見もわずか80年前。CTやMRIに至ってはほんの何十年かの歴史しかありません。人間の想像できることなら何でも実現可能、と誰か言っていましたけれど、医療においてもそうなのかもしれませんね。
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