うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下、不安、焦燥、不眠、食欲不振などが続く病気。しびれや痛みといった異変が体に生じたり、「自分は価値がない人間」などと思い込んだりすることもある。
発症時期は、20〜30歳代と50歳代前後の二つのピークがある。15%前後の人が一生のうちに1度はかかるとされ、自殺の大きな原因でもある。
治療は抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬などで行うが、カウンセリングも重要だ。
急性期の症状は1〜3か月で治まり、完治する人も多い。
統合失調症は、高校生や大学生など20歳代までに発症するケースがほとんど。幻覚と妄想が代表的な症状となって現れる。国内の患者は70万人を超える。
幻覚では、誰かが自分の悪口を言っている声が聞こえてくるなどの幻聴が多く、幻が見える幻視はまれだ。
妄想は主に被害妄想で、危害を加えられるなどと思い込むことがある。ほかに、まとまりのない会話や意欲の欠如などの症状もよくみられる。
こうした症状は、ストレスによる一過性の可能性もあるため、1か月以上続いた場合に統合失調症と診断される。ただ、統合失調症は1度発症すると、完治することはない。症状は治まっても、安定した日常生活を送るためには治療を一生続ける必要がある。
治療の中心は抗精神病薬。かつては便秘や手が震えるなどの副作用が出たが、ここ10年ほどで新薬が次々と登場し、副作用の心配は減った。
精神の病気には、医師、看護師以外にも様々な人がサポートにあたっている。
臨床心理士は、カウンセリングが主な仕事で、患者が困っている点や悩み事の相談に乗る。患者が病気について理解するための教育なども行い、患者が自分の病気に対処する力を養う手助けをする。
精神保健福祉士は、社会保障や就労支援の手続きなど、主に患者の生活向上や社会復帰などを支援する。作業療法士が、リハビリや買い物の訓練にあたることもある。
独立行政法人国立病院機構・花巻病院の石丸正吾医師(35)は、「精神の病気の治療には、薬だけでなく、周囲のサポートが大切」とアドバイスする。
精神的な病気の多くは、最初に不眠に陥る。ショックな出来事の直後に眠れなくなるのは当然だが、1週間近く続いた場合は注意が必要。病気の場合もあるので、医師に相談してほしい。
統合失調症の場合、前兆として「過敏性」が挙げられる。発言が自分に向けられていると意識したり、物音が人の声に聞こえたりするなど、音や視線に過敏に反応するようになる。
もっとも、統合失調症の患者の幻覚や妄想は、年齢を重ねると徐々に弱まっていく傾向がある。反面、意欲の欠如などは加齢とともに進行しやすい。
うつ病の場合は、胃潰瘍、円形脱毛症、手足のしびれなどの身体症状が先に現れ、内科を受診した後に発病がわかることも多い。
意外なケースでは、会社での昇進をきっかけに発病する人がいる。うつ病は、きまじめで几帳面、仕事熱心な人に多い。周りからは幸せそうに見える状況でも、期待に応えようと1人ですべてを抱え込んでしまうためだ。
うつ病の患者に最も大切なのは、ゆっくりと休養をとること。「さぼっている」と負い目を感じがちだが、抗うつ薬などの薬物療法も休養をとるための手助けになる。周囲の人は、励まさずに、ゆっくりと休める環境を作ってあげてほしい。
大事なことは、精神科の受診をためらわないでほしいということ。受診しなかった結果、患者が自殺するなどの事態になれば、より多くの人が傷つく。近くのクリニックでも構わないので、疑わしい場合は思い切って足を運んでほしい。
精神疾患、特に鬱病に関しては、ここ10年で飛躍的に認知度も高まってきた気はします。まだ漠然としたイメージでしかないので、誤解などもあり、難しいかもしれませんが。
やはりポイントとなるのは、「自分自身で精神科に偏見を持たず、具合が悪かったらすぐに精神科に行くこと」と「周囲の人は理解してあげること」でしょうね。ただ薬で治るものではなく、社会的な側面もありますので。
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