患者自身の心臓幹細胞を注入することにより、心筋梗塞(心臓発作)による損傷を修復する治療が米国の医師らによって初めて実施された。
米シーダーズ・サイナイCedars-Sinai心臓研究所(ロサンゼルス)で実施されている第I相臨床試験では、16人にこの治療を施行、別の8人を対照群とする予定となっており、今回39歳の男性に最初の治療が実施された。被験者はいずれも、登録前4週間以内に心筋梗塞を起こし、損傷および瘢痕のある患者。処置後6カ月間観察し、結果は2010年後半に発表される予定。
この治療では、まず画像により瘢痕の位置と程度を明らかにした後、低侵襲性の生検処置によって心臓組織の小片を採取し、これを専門機関に搬送して幹細胞を培養する。治療に必要な数(1,000万〜2,500万個)まで細胞が増えるのに約4週間を要するという。こうしてできた幹細胞を、カテーテルを用いて患者の冠動脈に注入する。
研究を率いた同研究所のEduardo Marban博士は「この方法は心疾患の理解と治療の新時代の到来を告げるのだ。5年前には心臓に幹細胞があることさえ知られていなかった。今、われわれはその幹細胞を利用して損傷された心臓を修復する方法を探究している」と述べている。成功すれば、数年以内にこの治療法が世界的に利用可能となり、心疾患患者にさらに広く適用されることを期待していると同氏はいう。
第1号の患者となったのは、米カリフォルニア州の小さな建設会社でオペレーターを務めるKenneth Milles氏。5月10日に主要冠動脈の99%が閉塞される大規模な心筋梗塞を起こし、心筋の21%が瘢痕化した。5月24日に組織が採取され、先ごろ治療が実施された。
この手の分野は日本のほうが先行しているかと思ったんですが、アメリカに先にやられましたねぇ。アメリカの医療の強みって、こういう新しい手法の認可が比較的早いところにあるんでしょう。
しかしこれで成功すれば、心筋梗塞の治療法として新しい分野が確立されるのは間違いありません。心筋梗塞は、起こした後に数日、数週、数ヶ月の単位で別の合併症が起こる可能性がありますからね。
関連
医学処:生理の血から心筋細胞を取り出し心臓病治療に使う。
医学処:心筋の成長を促すたんぱく質IGFBP-4を発見する。
医学処:iPS細胞で作った心筋シートで心筋梗塞を改善する。