東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授(代謝学)と岡芳知教授(糖尿病代謝学)らの研究グループは17日、ピロリ菌の除去によって、糖尿病の一種「B型インスリン抵抗症」の完治に成功したと発表した。片桐教授は「現時点で成功は1人だけだが、根治療法としてほかの患者にも適用できる可能性がある」としている。
B型インスリン抵抗症は、高血糖と低血糖を繰り返す病気。受容体と結合することで血糖値を下げるインスリンが、受容体と結合できずに発症する。受容体にインスリンに対する抗体ができるのが原因。
受容体の抗体が消えるなどしてインスリンが急激に作用し、急に冷や汗や体の震えなど激しい低血糖発作を数日の周期で起こす。
完治に成功した男性患者は、インスリン受容体の抗体の値が陽性を示した上、空腹時の血管中のインスリン値が正常値の10倍以上だったため、B型インスリン抵抗症と診断された。
この患者は血中の血小板が少なくなる「特発性血小板減少症」を併発。この治療にはピロリ菌の除菌が有効とされる研究結果があり、グループは除菌を実施した。
その結果、インスリン受容体の抗体も消滅し、空腹時のインスリン値も正常値まで低下。B型インスリン抵抗症が完治した。除菌後1年経過しても再発の兆候は見られなかった。
ピロリ菌の除菌は3種類の薬を1週間服用するだけで可能で、いったん除菌されれば再感染はまれだという。除菌は一般的な治療で、副作用もほとんどない。
片桐教授はB型インスリン抵抗症にはピロリ菌感染が関与している可能性を指摘。「除菌による治療法を知ってもらい、世界各地で試してもらいたい」と話している。
ピロリ菌によって起こるものは胃がんなどが有名ですが、リンパ腫なども起こすことが知られています。除菌することで免疫的に正常に戻れば、抗体も正常化して、B型インスリン抵抗症も治療できる、ということなのでしょう。
いやーこう色々分かってくると、ピロリ菌の発見がノーベル賞モノだということも改めて頷けますね。
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[B型インスリン抵抗症]
一般的な1型や2型の糖尿病と異なり、日本糖尿病学会の成因分類で「その他の特定の機序、疾患によるもの」の、「免疫機序によるまれな病態」に分類される。インスリン受容体に抗体ができて、インスリンが受容体と結合できなくなってしまうため高血糖になる。正確な統計データはないが、患者は数千〜数万人に一人と推測されるという。