植物とふれあう作業を高齢者や障害者のリハビリに生かす「園芸療法」の研究を続ける県立淡路景観園芸学校(淡路市)准教授の豊田正博さん(47)が、アルツハイマー型認知症患者の脳の働きを活性化させるのに園芸作業が有効であることを確認。20日に横浜市で開かれる日本老年精神医学会で、研究成果を発表する。
これまでも植物を育てることが患者の気持ちを安らげ、自信回復にもつながると考えられてきた。今回、豊田さんは県内の病院などの協力を得て、注意や判断力など認知機能をつかさどる脳の前頭連合野に園芸作業がどんな刺激を与えるかを、血流測定装置を使って調査した。
認知症患者25人、健常者20人の脳の血流を調べたところ、認知症患者は健常者と同様、(1)手を使って土を混ぜる(2)土を鉢に入れる(3)鉢に花を植える――のすべての行為で血流が上がった。特に、(1)の行為で脳が活発に活動することが分かった。豊田さんは「土を混ぜる作業は視覚と触覚を同時に働かすので大きな刺激になる」とみる。
一方、花の位置を決めたり、適度な土を盛ったりと、より複雑な判断力が求められる(3)の行為では、(1)ほどの脳の血流が認められなかった。認知症の人が込み入った作業をする際には、過去の作業記憶を呼び起こすなど情報処理に時間がかかるため、比較的緩やかな血流になるのではないか、と分析する。
また、道具などを持たずにただ、手を動かすだけでは血流反応はほとんどなかった。これらの結果から豊田さんは「脳の働きが活性化するには、園芸作業のように行動自体に意味を持たせ、反復作業をすることが重要。園芸療法を指導する側も、作業の難易に合わせて時間や内容を工夫する必要がある」と話す。
なるほど。ただ園芸という手を使った作業を行うことが効果がある、というわけではなさそうですね。
そう単純なことではなく、色々と医学的な点が考慮された上での「園芸療法」です。
関連
医学処:赤色LEDを当てたハーブはビタミンC含有量が9.7倍になる。
医学処:計画力を鍛える知的な趣味と運動で認知症を改善する。
医学処:法政大学で国内初の植物医師の養成学部が誕生。