抜け毛の原因にかかわる遺伝子を国立遺伝学研究所(静岡県三島市)と慶応大がマウスで見つけた。人も共通の仕組みを持つ可能性が高いという。25日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表した。
この遺伝子がつくるたんぱく質「Sox21」は、神経細胞の発生や増殖に関係していることが知られている。
遺伝研の相賀裕美子教授(発生遺伝学)と慶応大医学部の岡野栄之教授(生理学)らは、生まれつきSox21遺伝子を持たないマウスを作った。このマウスは生後まもなく体毛が生えそろうが、生後15日ごろ頭部から脱毛が始まり、1週間で全身の毛が抜けた。その後は、25日周期で脱毛と発毛を繰り返した。
マウスの毛は25日周期で生え変わる。脱毛マウスも周期や発毛機能は正常だが、抜けるスピードが異常に速かった。体毛を詳しく調べたところ、毛の表面を覆い、うろこのような形で毛根とつながっているキューティクルがほとんどなかった。
研究チームは、Sox21がキューティクルの材料のケラチンの生成にかかわっており、脱毛マウスはそれを持たないため抜け毛が早まると結論づけた。
研究チームは人の毛髪のキューティクルにもSox21遺伝子が発現していることを確認。相賀教授は「薄毛の人はSox21遺伝子やSox21の働きに問題があると推測できる。詳しい仕組みが分かれば、治療薬開発の糸口になるかもしれない」と話す。
そういえば昔にこの国立遺伝学研究所にお邪魔したことありましたね。今ふと思い出しましたが。あの時はES細胞に沸いていました。
そんな国立遺伝学研究所と慶應大の岡野教授とのコラボレーション。日本人全体に大いに関わる抜け毛・薄毛の研究です。
国立遺伝学研究所のサイトをお邪魔してみると、なかなかに面白い研究ばかり。
結婚指輪に相手のDNAを・・・ダイヤモンドに生体物質を固定してナノ加工
ダイヤモンドはその高い剛性と化学的安定性から、細胞内外への物質輸送に用いるための10~200 nmサイズの針に最適な材料であると考えられています。しかし、その高い化学安定性から研究室レベルでの表面修飾は困難と考えられてきました。ダイヤモンド表面にまれに存在する一価のダングリングボンドは酸素終端化によりOH基を持つ可能性があるので、化学修飾が可能と考えて挑戦し、表面上に安定なアミノシラン多層膜を形成することに成功しました。
面白いことに、形成された多層膜は、用いた溶媒の誘電率に依存した強度で表面に結合していました。このことは、表面硬度を制御できることを示し、実際にAFMを用いて表面にナノ加工ができました。堅い膜ができるときは、多層膜のアミノ基の反応性は低下していて、そのままでは生体物質の固定には向きませんが、高誘電率の溶媒で再処理することにより、硬度を維持したまま、アビジン分子を最密固定化できることを発見しました。このような性質はダイヤ以外では発見されておらず、ダイヤ針の長所を見出したことになります。硬度が制御できる分子機構のモデルをナノインデンテーションの結果から提唱しています。本法によりダイヤモンド上に生体分子を高密度に強く固定化できます。
つまり、結婚指輪のダイヤにDNAを高密度に強くつけることも可能になります。
美味しそうな匂いを伝える嗅覚神経回路を発見。
匂い情報に基づいた行動は、鼻の奥にある感覚神経細胞(嗅細胞)が、匂い分子によって活性化されることで引き起こされます。しかし、特定の匂い分子がどのような神経回路を使って行動を生み出すのかについては、ほとんど理解されていませんでした。私たちは、熱帯魚ゼブラフィッシュが好きな匂い「アミノ酸」を察知して近づいてゆく行動に必要な神経回路を世界で初めて同定しました。
私たちは、トランスポゾンを用いて、特定の嗅細胞のみで酵母転写因子Gal4を発現するトランスジェニックフィッシュを樹立しました。そのような系統を用いることで、特定の嗅細胞を可視化したり、その機能を操作することができるようになりました。私たちはこれらの手法を用いて、鼻から嗅球の外側へと結合する嗅細胞(微絨毛嗅細胞)を阻害すると、アミノ酸への誘引行動が失われることを発見しました。
この新しいアプローチによって、匂いによって引き起こされる様々な行動と、その背後にある神経回路の働きを詳しく理解できるようになると期待されます。本研究は、理化学研究所脳科学総合研究センターシナプス分子機構研究チーム(吉原良浩チームリーダー、小出哲也研究員)との共同研究によって行なわれました。
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