医師不足や地域、診療科による偏在を解消するための抜本対策として、医師の計画配置がクローズアップされている。
多くの先進国が何らかの計画的な医師配置策を取っているなか、厚生労働省研究班(班長=土屋了介・国立がんセンター中央病院院長)もこのほど、日本でも第三者機関が診療科ごとの専門医数などを定める計画的な医師養成を行うべきだとの提言を打ち出し、さらに論議が高まりそうだ。
厚労省研究班は、舛添厚労相の諮問機関である「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化検討会が2008年9月、医学部定員の1・5倍増などの提言を打ち出したのを受け、発足。質の高い専門医を養成するための制度改革などについて検討を重ねた。
報告書では、〈1〉専門医の質の向上を図る〈2〉患者を幅広く診ることができる家庭医・総合医を養成する――ことなどを掲げたが、その具体策として打ち出したのが、専門医の定数を定め、計画的に養成するための第三者機関の設立だ。
現在の専門医制度は、各診療科の学会が独自に認定。選考基準もまちまちで、定数も決まっていない。これが、産科や小児科、外科など激務の診療科で医師が不足する原因にもなっている。
研究班は、専門病院や学会、医学部、開業医、自治体らで組織する「卒後医学教育認定機構(仮称)」の設立を提言。地域ごとに、患者数に応じた適正な数の専門医が養成されるよう、研修病院に対し定員枠の策定を求める。
先進諸国の多くは、診療科や地域ごとに専門医の数を決めるなど、医師を計画的に配置する何らかの仕組みを設けている。フランスなどでは国による専門医数の規制が行われているほか、米国では医師らで作る第三者機関が専門医の養成数を定めている。
医師に診療科や地域ごとの定数を設けることについては、「職業選択の自由を奪うのではないか」、「居住地の自由もないのか」など、医師の自由意思を無視した強制的な配置ではないかとの誤解に基づく、反発の声も一部に聞かれる。
研究班では、医師が診療科や勤務場所を自由に選べる日本のように「市場に委ねる方法では、医師の配置は最適化されない」としたうえで、「強制的に行われるものではなく、患者数などに基づいて必要な専門医を養成することで、適正な医師配置に結びつけようとするもの」(土屋班長)と説明する。
国は今年度の医学部入学定員を昨春より693人増やし、過去最高の8486人に増員。また初期研修について、来年度から都道府県ごとの募集定員の上限を設けるなど、「医師不足対策」を講じているが、いずれも診療科別の定数などを規制するものではなく、医師不足・偏在解消の抜本策とはならない。
厚労省は、「今回の研究班提言を踏まえながら専門医のあり方を検討していきたい」(医政局総務課)としている。
医師不足や偏在の影響は、とりわけ地方の救急現場などで深刻な人手不足となって表れている。鳥取大病院(米子市)救命救急センターでは今年3月末、人手不足などによる激務を理由に、八木啓一教授以下4人の医師が一斉に辞職する事態に見舞われた。
同センターは専任の救急医7人に応援医師を加えた9人態勢で、年間約900人の救急患者を受け入れていたのが、2006年秋に2人が退職。月6回の宿直回数は10回ほどに増え、残った医師の負担は大きくなった。現在、横浜市立みなと赤十字病院救命救急センター長を務める八木医師は「救急専門医を育てようと頑張ったが、医師が集まらず心が折れた」と振り返る。
厚生労働省による06年の調査によると、日本の医師数は27万8000人と10年前に比べ約15%増えているのに対し、勤務が厳しいとされる外科、産科医は8〜10%減少。また救急医は、最低でも約5000人が必要との試算もあるのに対し約1700人しかおらず、慢性的な医師不足状態にあえいでいる。
鳥取大病院救命救急センターは現在、新しい救急医1人に、外科や整形外科などからの応援で急場をしのいでいる。豊島良太・同大病院院長は「何らかの医師配置の仕組みがないと、地方での医師確保は難しい」と話す。
だいたい、いいんじゃないですかね。
科ごとの人数を決めて、実力順に埋めていけば、生涯学習を怠っているやる気のない医師以外はだいたいやりたいところに行けるわけですし。
開業医と勤務医もやっていることのレベルが全然違うわけですからねぇ。そこらへんうまく金銭面や義務の格差化でうまく調整できればいいんですけれども。