喫煙者の尿中にある2つの化学物質濃度を測定することで、肺がんの早期発見が可能になるかもしれない。米ミネソタ大のジャンミン・ユアン准教授が19日、コロラド州デンバーで行われた米国がん研究会議で発表した。
米国では、がんの中でも肺腫瘍の致死率が最も高い。米国がん協会(ACS)によれば、2008年には肺がんで16万1840人が死亡し、21万5020人が新たに罹患している。
公衆衛生を専門とするユアン准教授は、悪性腫瘍の原因となる副生物または代謝物を正確に特定することが肺がん予防には重要であると考え、米国立がん研究所(NCI)の資金提供を受け、約500人の尿中代謝物を分析。さらに動物実験によって発がん性が認められている2種類の化学物質「NNAL」と、ニコチンの副生物である「コチニン」に注目し、肺がんとの関連性を10年にわたって追跡調査した。
その結果、尿中のNNAL濃度が高い喫煙者はその濃度が低い喫煙者よりも2倍、コチニンの濃度が高い場合は3倍、そして両方の化学物質濃度が高い場合は8.5倍に肺がんのリスクが高まることが分かった。
ユアン准教授は電話インタビューで「化学物質の尿中濃度検査が普及すれば、肺がんリスクの高い喫煙者を見つけて禁煙を促すことができる。禁煙が無理でも、集中的なスクリーニング検査で、ごく初期の肺がんを発見して治療することも可能になる」と指摘した。
同准教授によれば、この検査方法はまだ医師が利用できる段階ではない。世界各地域で認可を受け、多環芳香族炭化水素(PAH)などその他の発がん性物質を検査対象に加えた上で検査技術を向上させるまでには、およそ3年から5年を要するという。
「今のところ、尿中に排出される化学物質の濃度と肺がんの因果関係は明らかになっていないが、代謝システムは個人差があるため、発がん性物質の取り込み方にも違いが生じるのではないかと思われる。ここを出発点として予測モデルの開発にも取り組みたい」とユアン准教授は話す。
確実性では劣るものの、尿検査という侵襲性の低い検査によって、ハイリスクな人を捜し当てることが出来るというのは大きいですね。スクリーニングといって、正常な人の中から異常な人を見つけるにはこういった簡便な検査が有用です。肺がんの可能性の高い人をみつけられれば、早期がんの発見に繋がりますし。