2009年05月04日

世界卓球2009in横浜「松平健太VS北京五輪金メダリスト馬琳」

松平健、大金星へあと1歩/世界卓球

 青森山田高3年の松平健太(18)が、北京五輪金メダリスト馬琳(中国)と熱戦を繰り広げ、3−4で惜敗した。

 世界ランク101位の松平健が世紀の番狂わせに、あと1歩のところまで迫った。北京五輪金メダリスト馬琳との最終ゲームは一時、4−1とリードした。だが、それまで無欲だった高校3年生は初めて「勝ちを意識した」。強気だった攻めが慎重になって、中途半端な返球を痛打され、7−6から4連続失点。マッチポイントとなってから2点を返したが、最後はコースが甘くなったサーブをリターンで決められた。

 石川県七尾市出身。卓球教室を営む両親の指導で小学生から頭角を現した。中学1年の秋に青森山田中に転入し、日本卓球協会が進める英才教育のプログラムの下、2年前からドイツリーグに武者修行に出た。変則回転のサーブに手を焼いて、最後は顔を真っ赤にして大粒の汗を流した馬琳は「負けると思った。最後は気持ちの戦い。近い将来、彼は中国にとって強敵となるだろう」と絶賛した。

 現在167センチの身長はまだ伸びているという。体に負荷をかけないため、ウエートトレーニングを避けていたが、日本男子代表の宮崎監督は「これから体力がつけば(12年の)ロンドン五輪では優勝候補と言われる位置にいると思う」と話す。松平健は「将来は世界選手権や五輪で金メダル」と聞かれ「あと5年以内に絶対になれます」と屈託なく話し、力強く胸を張った。

男子シングルス4回戦 松平健太が馬琳に肉薄

 あと3日を残してこの試合が今大会のベストマッチだったというのは過言だろうか。世界卓球2009横浜大会4日目の5月2日、男子シングルス4回戦。また卓球史に残る素晴らしい一戦が誕生した。それがこの松平健太 vs 馬琳の対決だ。

 ボールの軌道がバウンドしてから変化する松平のしゃがみこみサービスを馬琳はいきなり空振り。この瞬間会場中の予感が確信に変わったかもしれない。松平は速い打点のカウンター、下がった馬琳のロビングを打ち切るなどして馬琳と互角の勝負を繰り広げるが、馬琳のブツ切り下回転サービスをネットにかけるとこのゲームを9-11で失う。2ゲーム目も素晴らしいプレーを見せながらもミスの少なさで馬琳に軍配が上がり、7-11。しかし会場の期待に満ちた声援はどんどん大きくなっていく。

 第3ゲーム、松平は3球目で大きく振り抜く強烈なバックドライブを見せたかと思うと、フォアクロスの激しい引き合いで馬琳を抜くなど、驚異的なプレーを連発する。このゲームを11-4に抑えて1−2とする。第4ゲームやはり内容的には松平がリードする流れで10-8。しかしここから馬琳がバック深くにフォアハンドドライブを放ち10-9、馬琳のドライブに健太のブロックが10-10。やはり馬琳、勝負所知っている。結局フォアドライブを左右に打ち分けてこのジュースを馬琳が制して1−3。やはり中国に勝つのは、特にこの男に勝つのはそう容易なことではないと皆が思い知らされたことだろう。

 第5ゲーム、2-3から2-5と馬琳に離されると、吉田監督がすかさずタイムアウト。そこから怒涛の反撃で6-6と追いつくと明らかに馬琳を圧倒する強さで、ポイントを連取して11-8。第6ゲーム健太が下げられてロビングをあげると、馬琳がこれをオーバーミス。しゃがみこみサーブからの3球目攻撃、3球目のフォア前フリックが次々と決まってあっという間に7-1まで引き離す。馬琳はやっと届いたボールを裏面カットしたり、カット性のプッシュを使うなどなすすべなしの状態。後半迫られるも、このゲームを11-8と取り返し、ゲームカウントは3−3。このとき会場の健太コールは横浜アリーナを揺るがすほどのものだった。

 松平は出だしで3球目攻撃を連続で決めると、4-1とリード。日本の高校生が中国の北京五輪王者を倒す瞬間を現実的なものとして感じ始めただろう。そして、それを不安とともに最も強く感じていたのが松平健太自身だった。馬琳は意地で3球目のまわり込みフォアを厳しいコースにお見舞いして5-5に。ここからシーソーゲームで6-6、7-7と一進一退の攻防。馬琳がまた意地の3球目攻撃でまわり込みフォアハンドドライブをフォアクロスに決めると、次はフォア前に浮いたレシーブをストレートにエースで7-9。松平のサーブから馬琳がフォアクロスにはなったドライブから引き合いに。松平はバック側に来たドライブもバックハンドドライブで応戦。馬琳フォア、松平バックの引き合いの末、松平がフルスイングのバックハンドドライブをオーバーさせると7-10。リードは広がった。次のボール、松平が3球目攻撃を決めて8-10、バックバックのラリーから松平がフォアに大きく振って9-10。馬琳が出したナックル性のショートサービスを浮かし気味にストップした松平。次の瞬間、松平の左わきを馬琳の打球が通過していった。



 いやーホント凄い試合でした。

 マリンは北京オリンピックでも優勝し、それまでも世界卓球で準優勝という成績。化け物級の強さです。

 それに見事なまでに食らいついた、いや、特筆すべきは打ち合いでも負けていなかったということです。

 サーブも効いていましたし、相手のドライブを見事にバックで処理していました。

 これは勝てるかもしれないと興奮しながら食い入るように見ていました。

 最終セット、ちょうど4-1とリードしたとき、「勝ちを意識してはいけない!!」と思ったものです。スポーツというものは精神面も重要ですが、特に卓球においてはそれが顕著に出てしまう。守るべきなのか打ち抜くべきなのか、安全圏に入れるべきなのかリスクを冒しても攻めるべきなのか、それを瞬時に判断するわけですからね。

 しかしやはり経験でマリンが勝りました。

 いやしかしこれは本当に素晴らしい。大健闘です。

 以下、マツケンのコメント。

 「チャンスがあっただけに悔しい。

 4−1でリードした時に勝ちを意識した。試合としては、思い切ってできたことが良かった。相手のボールに早いうちに慣れることができた。競った時の戦術面が、相手のほうが上だった。競った時に相手のほうが思い切ってきた。

 試合前は、フォアを中心に集めるという対策を考えていた。馬琳は足と台上がスゴイので、戦型は違うけどよくビデオは見ていた。1ゲームか2ゲーム取れれば相手もびびってくれるとは思っていた。応援の声はすごく力になった。負けて悔しいけど、差はそこまで開いてないなと感じたので自信になった。サービスが効いたと思う。

 馬琳との試合中、良いボールが決まった時は観客も沸いてくれるので楽しい。今大会は、自分より世界ランキングの高い選手3人に勝てたので、良い成績だと思う。

(馬琳のように、金メダリストになるまであと何年?と聞かれて)

 あと5年以内に絶対なりたい



 あと5年!何とも頼もしい言葉じゃないですか。

 松平ならやれる、そんな試合内容でした。早い打点の卓球があそこまで通用するとは思っていませんでしたし、しゃがみこみサーブも中国トップクラスに通用していましたし。

 男子日本の卓球の将来が楽しみです。

 医学処は松平健太選手を応援しています。

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posted by さじ at 01:53 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
はじめまして。いつも医学処楽しく読ませていただいています。
全日本での準優勝も素晴らしかったですが、
今回の大会ではさらに成長していて、対呉尚垠戦での勝利といい、本当に感動的な試合ばかりでした。
お兄さんの賢二君も先月のビックトーナメントでは、木方、吉田、韓陽、水谷を破って優勝と、実力を伸ばしていますし、日本卓球の将来を本当に期待させられます。
Posted by k at 2009年05月04日 22:23
Kさんコメントありがとうございます。
松平兄弟には大いに期待したいところですね。弟は世界で通用するほどの実力を身につけていますし、兄もようやく自分の勝てる卓球スタイルを確立しつつあるようですし(世界卓球でもクズミンと凄くいい試合をしていました)

あとは日本の国と企業を揚げて、選手一同を育てる環境を整えてくれれば絶対に世界で通用すると思います。
Posted by さじ at 2009年05月05日 02:25
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