美容効果で人気が高いケミカルピーリングの技法が、早期皮膚がんの新たな治療法になりそうだ。和歌山県立医大が治療後の長期追跡調査をし、患者の8割は1年以上再発せず、完治していた。入院や麻酔、複雑な器具がいらないため、老人保健施設などに入所しているお年寄りへの訪問治療の道が開ける。
ケミカルピーリングは、化学薬品で皮膚表面を薄く溶かし、健康な皮膚の再生を促す治療法。しみやニキビ跡など美容皮膚科でよく使われている。和歌山医大皮膚科は、皮膚表面にとどまっている早期の皮膚がんをこの手法で取り去る試みを8年前に始めた。早期皮膚がんは通常、手術で切り取る。傷が残るうえ、麻酔に耐えられない人や、耳たぶやまぶたなどには対応しにくかった。山本有紀准教授らは、このような患者のうち、説明を受け希望した31〜91歳の46人に1〜8回のピーリング療法をした。
その結果、15%に当たる7人が、がんが取りきれず手術を受けた。残りの39人を治療から1〜6年間観察したところ、1年後に2人再発したが、80%に当たる37人は、再発しなかった。病状を分析し(1)がんの厚さが0.4ミリを超える(2)がんの中に細胞分裂の活発さを示すたんぱく質が多い、という条件がある患者は、ピーリング療法では治りにくいことが分かった。
ピーリング療法は、綿棒に薬剤をつけ、がんの部分にぴっと塗るだけ。1回数秒で、痛みは一瞬だ。1カ月に1回の治療を、1〜8回する。
これらの結果は、今月発行の米国皮膚科学会誌に発表された。
山本准教授は「高齢化社会に伴って、皮膚がんの患者は増えている。この治療法は今後、在宅医療のひとつになるだろう」と話している。
おっ、これはいいですね。癌にも応用できる点が素晴らしい。
というのも、高齢者の場合、皮膚癌を切除するというだけでもかなり負担になるものです。特に足の裏に出来たようなものだと、その後の日常生活にも影響してきますからね。
切らずに治るならそれにこしたことはないです。80%の確率で再発せずにとることができたというのは大きなポイントか。
ケミカルピーリング
主にニキビ跡やしみの治療、皮膚の若返りなど、皮膚の美容的な状態改善を目的とする医療の一つ。安全に実施するには皮膚科学の専門知識が欠かせない。美容的な目的でのピーリングでは、肌への刺激が比較的穏やかなグリコール酸などを使うことが多いが、和歌山県立医大のがん治療では、細胞死を誘導する効果が強いフェノールを使っている。
厚生労働省が00年に「医業に該当する」と明言する以前は、美容サロンなど非医療者によるピーリングでトラブルが起きる例が多発した。日本皮膚科学会は医師向けに「ケミカルピーリングガイドライン」を01年に作り、昨年は新たな研究成果を盛り込んだ改訂3版を発表している。
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メラノーマなどにも使えるのだろうか。
ところで、再発した二人だが、もう一度ピーリングで治療してみたのだろうか。
何も書いてないので気になる。
そして風呂好きの日本人には、皮膚癌が少ないと聞いたことが有る。
それは、癌細胞は高温に弱いので、出来たばかりの皮膚癌が、お風呂で死滅してしまうからだとか。
なんとなく、この療法と似ている。