携帯電話の電磁波による健康影響に関心が高まっている。世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)は、日本を含む13カ国参加の共同疫学調査の結果を分析中だ。日本の携帯電話加入数は1億を超え子どもにも急速に普及しているが、長期的な影響を調べたデータは少なく、大規模追跡調査が始まったところだ。
3月末、東京都内で開かれた日本衛生学会のシンポジウム。携帯電話の電磁波による健康影響について報告が相次いだ。武林亨・慶応大教授(公衆衛生学)は、日本の研究では脳腫瘍などとの関連を示すデータは出なかったと発表。「北欧では長期使用者で携帯電話をあてる側に発生リスクが上昇したという報告もある。国際的疫学研究の全体の解析結果を待ちたい」との考えを示した。
また、東京女子医大の佐藤康仁助教(公衆衛生学)は「成人については疫学研究が行われている。しかし、小児を対象とした研究はほとんどない。WHOが優先度の高い研究課題に位置づけている」と説明した。
IARCが解析中の国際的疫学研究(インターフォン研究)も、対象は成人だ。日、欧、豪州、イスラエルなど13カ国が共通の研究計画で実施した。日本では00年から4年間、首都圏に住む30〜69歳の男女で、脳腫瘍や聴神経鞘腫と診断された患者と健康な人を対象に実施した。神経膠腫、髄膜腫などの脳腫瘍や聴神経鞘腫の発症率は、携帯電話使用の有無で差がなかった。携帯電話をあてる側と腫瘍との関連もみられなかった。
しかし、10年以上の長期使用者では携帯電話をあてる側でリスクが上昇する結果が、一部の国で出ている。スウェーデンでは聴神経鞘腫の発症率が3・9倍になったほか、北欧と英国5カ国のデータを合わせて解析した結果は、1・8倍になった。
WHO国際電磁界プロジェクト事務局の勤務経験がある大久保千代次・電磁界情報センター所長は「長期使用者の症例数が少ないうえ、右側に脳腫瘍ができれば、右側に携帯電話をあてていたと思いがちだ」と、調査結果に疑問を投げかける。IARCは各国のデータを一つにして解析中で、その結果を踏まえ、WHOが11年にも健康影響の評価書を作成するとみられている。
WHOは96年、国際電磁界プロジェクトを発足させた。現在は60カ国以上が参加し、携帯電話に限らず、0〜300ギガヘルツのさまざまな周波数の電磁波リスク評価に取り組んでいる。子どもについては、高圧送電線と小児白血病との関連が研究され、07年にリスク評価書が発表された。
送電線の周波数は50〜60ヘルツと超低周波。ただ、浴び続けると白血病の発症頻度が上がることが分かった。評価書は、0・3〜0・4マイクロテスラ(テスラは磁界の強さ)以上だと、小児白血病が倍増するという疫学調査結果を認めた。しかし、動物実験では発がん性が確認されず、関連を示す証拠は強くないと結論付けた。
携帯電話の電磁波は送電線とは違い、1ギガヘルツ前後の高周波だ。大久保さんによると、これまでの動物実験では携帯電話と同レベルの電磁波が、生体に影響をもたらすという再現性のある研究結果は確認されていないという。総務省も健康に悪影響を与える科学的根拠はないという見解だ。
では、なぜ、子どもへの影響が心配されているのか。山口直人・東京女子医大教授(公衆衛生学)は「子どもは今の大人より長期間使うことになるし、頭部の形状も大人と違う」と説明する。携帯電話は頭部に密着させて使ううえ、使われ始めてからまだ年数が浅い。影響を十分調べたとはいえない状況だ。
日本では昨年から総務省予算で、東京女子医大が中心となり、インターネットによる疫学調査を進めている。小学4〜6年の保護者が対象で、子どもの携帯電話の使用状況や入院の有無などを、定期的に電子メールで回答してもらう。しかし、小児の脳腫瘍は10万人に2人程度と発症率が低いため、信頼性の高い結果を得るには多くの参加者が必要で協力者を募っている。
携帯電話と脳腫瘍については、米国では訴訟が起きている。この問題に詳しいジャーナリストの矢部武さん(55)は「米国の訴訟では労災が認められたケースもある。安全性が証明されていない中で、英国のように子どもは携帯電話の使用を控えるよう勧告している国もある。利用者はリスクがありうることを知った上で使ってほしい」と訴える。
まだ出来て間もないものですから、慎重にしないといけませんね。あと100年後に公然の事実となっているかもしれないことですが、今はまだ分からない時期です。もしかすると脳腫瘍が増える結果となるかもしれないし、何も影響しないかもしれない。
まあ脳腫瘍がどうのというより子供に携帯電話、というのは微妙といえば微妙ですけどね。昔の携帯みたいにネット機能だけでもないほうがいいと思います。どんなに便利なものでも使うものの程度が追いついていないと不幸を呼ぶのです。
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