進行した虫歯に電磁波を照射し、周囲の骨の再生を促進させることで抜歯せずに治療する方法を、鳴門市瀬戸町明神の歯科医師で徳島大学社会人大学院(歯科保存学)二年の富永敏彦さん(43)が開発した。歯科医療関係者によると、電磁波を用いての再生治療は例がない。富永さんは三十日に米国で開かれる国際学会で、開発した治療方法を発表する。
虫歯の症状は、進行に応じて四段階に分けられている。虫歯が歯の中心部の歯髄に達すると、四段階中の三段階とされ、歯根や歯槽骨の周囲が細菌に侵されて炎症が発生。うみができ、歯槽骨が溶かされる。歯槽骨が大きく溶かされている場合、抜歯し、入れ歯にするか、あごの骨に人工の根を埋め込む「インプラント」療法で対応する場合が多い。
歯の神経を抜く際、電磁波を照射する針状の器具を使用していた富永さんは、その殺菌効果に注目し、五年前から歯根周囲への利用研究を開始。二年前、歯根の深い場所を殺菌するため器具を改良し、針先だけから電磁波が出るようにした。
この器具で、溶かされた歯槽骨周辺に五百キロヘルツの電磁波を一秒間、数回照射すると、殺菌効果とともに、歯槽骨の骨芽細胞も活性化。一カ月で厚さ一−二ミリの歯槽骨が再生し、歯を支えることが分かった。二年間の臨床では、四十二症例すべてで抜歯せず、虫歯の部分を削って金属やセラミックなどを詰める治療で対応できた。電磁波は微弱で、照射も短時間なので健康面に影響はないという。
指導教官の松尾敬志教授(歯科保存学)は「抜歯せざるを得なかった虫歯の治癒の可能性が高まった」とする。
また、電磁波治療は一−二カ月で終了するため、一年程度かかるインプラントに比べて、患者の負担が軽減できる。
富永さんは「虫歯になっても、できるだけ自分の歯を残す治療がいい。電磁波治療を広めたい」と話している。
口腔再生学に詳しい東京医科歯科大大学院・春日井昇平教授の話
電磁波で治療するのは聞いたことがない。治療方法が変わる画期的なことだ。
進行虫歯はありませんが、もしあったらやってみたいですねーこれ。歯を再生するというわけにはいきませんが、自分の歯を残すことが出来るようです。
こういう治療法が広がれば、歯科領域で自分の歯を残したまま老後を迎えられる人も増えるかもしれません。
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