女性ホルモンのエストロゲンに、脳の血管を広げて血流を増やし、記憶や学習の能力を改善させる効果があることを、理化学研究所(理研)がマウス実験で発見した。老化に伴い、血流が減って起こる記憶障害の予防や治療薬の開発につながる成果で、10日付の米科学誌プロス・ワンに発表した。
研究チームは、遺伝子操作で慢性的に脳の血流量が減少するマウスを作った。すると、エストロゲンを分泌する卵巣を切除した雌と雄だけ、神経細胞の周囲にあるアストロサイトという細胞が膨張して、神経細胞同士のつながりを邪魔し、記憶障害が起きた。
また、遺伝子操作で血流が減った雄に、正常な雌の分泌量と同程度のエストロゲンを投与すると、脳の血管が拡張して血流が回復し、神経細胞のつながりが正常に戻った。さらに迷路を使った実験で記憶や学習の能力が回復したことを確認した。
ただし、エストロゲンには女性化や乳がん発症の危険性を高める作用があり、そのままでは薬として使えない。理研の山田真久ユニットリーダー(神経生物学)は「アストロサイトの膨張を防ぐ薬を開発できれば、脳機能の改善に役立つのではないか」と話す。
ホルモンが足りなければホルモンを投与すればいい、と思われがちですが、意外とそういうわけにもいかないんですよね。ホルモンは身体じゅうのあらゆるところでバランスを整えているので、実際に補充しようとすると副作用が出てしまう危険性もあります。
記憶力など、脳の血流を改善する目的でエストロゲンを投与しても記事中にあるような副作用が出てしまうでしょう。より脳血管に特異的なものが開発されれば、治療薬として使えそうです。
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