卵や海藻に多く含まれる栄養素「アラキドン酸」が脳の神経細胞の生成を促すことを、東北大などが動物実験で突き止めた。神経細胞の生成の減少は精神疾患に関係しているとの説があり、食品が精神疾患の予防や治療に役立つ可能性を示した成果という。7日付の米科学誌プロス・ワンに発表した。
アラキドン酸は脳の発生に重要な役割を担う脂肪酸の一種。全脂肪酸中に4%のアラキドン酸を含む餌を与えた母ラットの母乳を、生後直後の子ラットに飲ませると、神経細胞の生成数は、アラキドン酸なしの場合に比べ30%増えた。生まれつき神経生成が少ないラットに同じ餌を与えると、それまで見られた不要な音に反応しやすい状態が改善した。この状態は統合失調症患者らに見られる。
アラキドン酸は体内で合成できない。大隅典子・東北大教授(神経発生学)は「脳の発生期に適切な栄養を取ることで、心の病を予防できる可能性がある」と話す。
アラキドン酸は、不飽和脂肪酸のひとつ。4つの二重結合を含む20個の炭素鎖からなるカルボン酸。
細胞膜中のリン脂質として存在し、なかでも脳に多く含まれる。 アラキドン酸はホスホリパーゼA2によってリン脂質から遊離し、ここから プロスタグランジン・トロンボキサン・ロイコトリエンなど、一連のエイコサノイドがつくられ、また細胞間のシグナル伝達におけるセカンドメッセンジャーとして働く。これらの生合成過程や体内での作用はアラキドン酸カスケードと呼ばれる。
遊離アラキドン酸は、アラキドン酸カスケードと呼ばれる代謝経路でシクロオキシゲナーゼ(COX、cyclooxygenase)により代謝され、PGG2を経て、発痛物質であるPGE2などが合成される。また、LT(ロイコトリエン)合成系で、炎症促進作用(気管支平滑筋や血管透過性亢進作用など)があるLTが合成される。