自閉症の原因の一つは、神経細胞中のタンパクが正常な網目構造をつくれないことに起因することを、理化学研究所脳科学総合研究センターの研究者たちが突き止めた。
自閉症は、家族環境や社会環境とは関係のない先天性の脳機能障害で、原因因子として、神経シナプス形成時に働く遺伝子の異常がいくつか見つかっている。同センターシナプス機能研究チームの林真理子研究員、林康紀チームリーダーは米国やイタリアの研究者と共同で、原因遺伝子の一つとして知られるShank遺伝子がつくるタンパクとそれを結びつける役割を果たしているタンパク「Homer」の機能をX線結晶構造解析などにより調べた。
その結果、2つのタンパクは網目構造をつくっており、この網目構造は、神経伝達物質の受容体を含むほかのタンパク質を固定する役割を果たし、シナプスの神経伝達機能に関与していることが分かった。
自閉症の原因因子ではないかとされるほかのタンパク質の中にも、シナプスの機能に影響していると考えられるものがある。シナプスの機能を改善するような薬を開発すれば、自閉症の一般的な治療法の確立も期待できる、と研究者たちは言っている。
脳のメカニズムは人体の中でも特に解明されていない最たるものです。
しかし少しずつですが、前進しています。今はまだ研究段階ですが、将来はこれを応用した薬の開発も行えるようになると思います。
考えてみれば統合失調症やうつ病も、画期的治療薬が開発され、実際に治療として劇的に効果を挙げるといったこともされてきました。自閉症に関しても同じようなことが期待できると思います。
治療法が確立していない今は、自閉症児に関する正しい知識と理解が、全国民に求められる時代なのです。偏見をつくることなく研究が実を結ぶそのときを待ち望みたいと思います。
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