信大医学部(松本市)は国内で初めて、患者の皮下脂肪にある幹細胞を血管再生に使う臨床試験を始める。4月中に厚生労働省の審査委員会に申請し、承認され次第着手する。現在は骨髄細胞を使う手法が主流だが、患者の体にかかる負担が大きいことが課題だった。皮下脂肪ならば比較的容易に採取できる上、治療効果も高いと期待されている。実現すれば、再生医療の普及に弾みがつきそうだ。
臨床試験は、信大、名古屋大(愛知県)、熊本大(熊本県)、福岡徳洲会病院(福岡県)の4施設で行う。いずれも糖尿病などで手足の末梢血管が詰まる「末梢閉塞性動脈疾患」の重症患者を対象にする。
患者の皮下脂肪100−300グラムを採取し、共同研究者である米サイトリ・セラピューティクス社が開発した機器で「脂肪組織由来幹細胞(ADSC)」を分離。病気で血液が流れなくなった部分の筋肉数10カ所に注射器で移植する。脂肪採取から移植終了まで数時間で済む。
信大は2003年以降、骨髄細胞による血管再生を26例行った。骨髄採取には全身麻酔が必要で、患者への負担が大きい。一方、皮下脂肪は局所麻酔だけで簡単に採取できる点がメリットだ。
さらに、共同研究者の室原豊明・名古屋大医学部教授(循環器内科)は「マウスを使った動物実験の結果によると、ADSCによる血管再生の効果はヒトでもかなり期待できる」とみている。
臨床試験は、希望する患者を対象に実施。3年間で各施設10人ずつ計40人に行い、安全性や有効性を見極める。効果が確認されればさらに参加施設を増やし、将来は骨髄細胞による血管再生と同様、「高度先進医療」として医療保険適用を目指す。4月中にも、厚労省の「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」に申請する予定だ。
信大は、付属病院の循環器内科、形成外科、心臓血管外科、先端細胞治療センターがチームを組む。池田宇一教授(循環器内科)は「ADSCは骨髄細胞に置き換わり、血管再生にとどまらず、再生医療の中心的な『細胞源』になる可能性がある」としている。
骨髄を採取して血管を再生するのも凄いと思いますが、脂肪を採取して、血管を再生できるようになれば、まさしく画期的治療法となるでしょう。
糖尿病などで末梢の血管が閉塞してしまうと、そこの部分に血流がいかなくなるわけですから、足の指などが壊死してしまいます。血管を再生してやることで、壊死を防ぐことができるようになるわけです。
いずれは国の保険適用となってほしいぐらいの素晴らしい技術。成功を祈ります。
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