2009年04月02日

医学の嗚咽8

14. 名無しさん 2008年09月30日(火) 07:26

俺のかーちゃん、俺が高3に上がったときに
いきなり倒れて入院した。

検査をして入院が決まったが
俺は内容を詳しくきかされなかった。
夏頃から受験勉強もあって
かーちゃんに会いにいく時間も取れなくなっていった。

俺は決して頭が良くはなかった。かーちゃんは立教出身。
俺は小さい頃良く「かーちゃんと同じ大学にいく」と言ってた。
実際に受験となると、ハードルは高かったけど
立教を目指してがんばった。
冬になり、かーちゃんは次第に痩せていった。
飯も食わなくなり、俺の手を良く握るようになった。
かーちゃんは俺に色々と話をさせた。
学校 進路 夢
何であのとき気がつかなかったんだろう…

涙が…ちょヤバ…
最後の模試の結果が出た。
努力の甲斐か、立教大B判定が出た。
俺からすれば奇跡に近い
おれは帰りに病院に行き結果を見せた。
俺「かーちゃん、おれ立教大いくよ。判定もホラ」
得意げに模試を見せた。
かーちゃん「がんばってるのね
タケシ(仮)が後輩になってくれたらかーちゃん嬉しいよ」
その日もかーちゃんは俺にたくさん話をさせた
俺の手を握りながら…楽しそうに
それからすぐ、俺は大学入試を迎えた。
大本命の日、朝早く起きて下に降りるとかーちゃんが台所にいた
俺:何やってんだよかーちゃん、寝てなきゃ
母:今日は本命の日でしょ、お弁当持ってきなさい

一年ぶりのかーちゃんの弁当だった
俺は涙が出るのをこらえながら準備をして出かけようとしたとき
かーちゃんが急に苦しみだした
俺は急いで病院に電話し、救急車がきた
家には俺しかおらず、付き添って行った。
意識が飛びそうになるくらい
混乱しながら苦しむかーちゃんの手を握った。
病院についてすぐ親父も駆けつけた。しばらくして担当医に呼ばれた。
最期になるかもしれないのでついてあげて下さい

俺と親父が病室に入ったときかーちゃんは無惨なほどだった
血の気は引き、やせ細り…しばらくして意識が戻った
かーちゃんはいつもみたく手を握った
病人とは思えないくらい強く
俺は子供みたいに泣いていた…
かーちゃんは声にならない声で何かを呟いていた。
俺は耳を近づけて聞き取ろうとすると確かにこう言っていた
「受けてきなさい」
そしてかーちゃんは俺から手を離した
そんなの無理に決まっている。
かーちゃんを置いて受験に行くなんてしかももう8時を回っている
間に合うとしてもギリギリだった。困惑した俺に親父が声をかけた。
「行ってきなさい、母さんもそうしなさいと言ってくれてるんだ」

俺はかーちゃんの手をもう一度握ると弾けたように病室を飛び出していた。
そこからどうやって来たかはおぼえていない。
走って…乗り換えて…池袋駅を疾駆して
何とか一限の筆記を受けたときやっと正常な時間の流れに戻った気がする。

昼休み、何も食べる気がしなかったがかーちゃんの弁当を思い出した。
俺は中庭でそれを広げた時
何とも言えない懐かしさと何かこみ上げるものを感じた。
それは俺が中高5年間食べたかーちゃんの弁当だった
おいしい…涙をこらえ食べた かーちゃん…
それからは流れるように時間がたち手応えも何も感じないまま
フラフラと地元まで帰った…

病室に入ると、かーちゃんは居なかった
看護婦さんに聞いて霊安室につれていってもらった。
数名の御遺体の中、変わり果てたかーちゃんを見つけ
俺は叫びともつかない嗚咽をし、かーちゃんを抱きしめた。

担当の看護婦さんに連れられてラウンジで落ち着くまで色々な話を聞いた。
かーちゃんは俺が来た数日は本当に機嫌がよかったそうだ
看護婦さんや医者、同じ病室の人にも よく俺の話をしていたらしい。
逆に俺が来ない日が続くと元気がなく、泣いている日もあったという。
帰り際に、一枚のメモをもらった。
病院備え付けの薄っぺらいメモ用紙には
震えた力無い「お疲れさま」の文字があった。
葬式や通夜が終わり、俺は発表を見に行った。
結果は合格
俺は泣いた
合格も嬉しかったけれど
何より心で叫んだ
かーちゃん、ちゃんと受かったよ!!!!
お祝いしてくれよ、かーちゃんの弁当で花見行こうよ
何で…こんな時にいないんだよ…

かーちゃん…

俺は合格通知をかーちゃんの墓に見せに行き
たくさんの話をした。
端から見たら変な人に見えるだろう
でも俺はこの18年間のごめんなさいと ありがとう を全部語った。


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医学処:医学の嗚咽
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医学処:医学の嗚咽7
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posted by さじ at 01:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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