リスクの高い妊婦を24時間体制で受け入れる「総合周産期母子医療センター」の指定を受けている愛育病院(東京都港区)が、指定返上を都に打診した問題について、波紋が広がっている。返上の理由は労働基準監督署から医師らを長時間働かせた労働基準法違反で是正勧告を受けたため。周産期医療の維持が、過酷な医師の勤務実態の上に成り立っていることを改めて浮き彫りにした格好で、病院側は「国が医師の労働環境を改善しないのに、労基法を守れというのには無理がある」と訴えている。
24日夕、愛育病院から都に一本の電話が入った。「総合周産期母子医療センターから地域周産期母子医療センターの指定に変更したい」。「総合」の指定返上をこう切り出した。
都の基準では「総合」は新生児集中治療室(NICU)などを備え、24時間体制で複数の産科医が勤務することが必要。一方、「地域」では夜間、休日での複数医師勤務は求められていない。
同病院によると、15人の産科医のうち4人が子育てなどのため夜間勤務ができないという。三田労基署は17日、労働基準法に基づく労使協定を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、是正を勧告。病院側は「各医師に法定の労働時間を守らせると、常勤医師1人を含む医師2人による当直は難しい」と判断したのだ。
「搬送調整など他病院が代わりを務めることは難しい」。都は26日、愛育病院に対して「総合」の指定継続を求めた。
愛育病院は、周産期医療のあり方などを検討する「都周産期医療協議会」のメンバーだ。都内の周産期医療体制について熟知しているだけに「指定返上」の打診は医療関係者の間でさまざまな憶測を呼んだ。
愛育病院の中林正雄院長は記者会見で、「産科医不足の中では国からの資金支援などがなければ、病院側も産科医の過酷な労働環境を改善することはできない。悪条件が改善されないのに労基法だけを守れというのは現実的ではない」と反発した。
愛育病院側は現在、都の意向を受け、条件付きで指定継続を検討しているが、「社会全体で周産期医療のあり方について考えてほしい」(中林院長)と訴えている。
労働基準法に詳しい伊藤博義・宮城教育大名誉教授は「労働基準法を守れないほど長時間労働をしなければならない医療現場の実情に対し、行政側も自らの責任について考え、対応していく必要がある」と話した。
労働基準法?
病院に勤務している医者の中で、労働基準法を守れている医者って何人いるんでしょうか。
行政は医者が労働基準法以上に仕事をしていることを今まで無視してきたのに何故、って気持ちです。
資金を提供しない、医師不足を今までほったらかしにしていた(それどころかマスコミを使って医師は過剰だとバッシングしていた)にもかかわらず、病院側に待遇を改善しろというのは無茶な話ですわ。
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