脊髄損傷患者がリハビリテーションで感じる不快な痛みは、リハビリによって再生した神経が誤った方向に伸びるため起きることを、自治医科大の遠藤照顕医師(整形外科)らの研究チームがラットの実験で突き止めた。神経を伸ばす物質の働きを抑えることで痛みを減らせることも確認した。欧州の神経内科学誌電子版に発表した。
実験は、脊髄損傷を起こしたラットに、損傷1週間後から8週間、機械を使ってリハビリさせた。この間、刺激に対する足の動きから痛みの程度を分析すると、訓練期間が長くなるほど小さな刺激でも痛みを感じやすくなった。損傷個所では、痛みを脳に伝える末梢神経が、正常なラットとは異なり、深い方向に伸びていた。人間の脊髄損傷でもリハビリによって痛みが強まることが知られている。
末梢神経の増殖にかかわる物質の働きを抑える物質をラットの脊髄内に注入すると、痛みの感受性が正常ラットとほぼ同じに戻り、神経細胞の深い部分への伸びも抑えられた。
重い脊髄損傷の治療法として、幹細胞移植による神経再生の研究が進んでいるが、この過程でも痛みが起きることがラットの実験で指摘されている。チームの小林英司教授(移植・再生医学)は「同様の仕組みで痛みが起きている可能性がある。今後、人工多能性幹細胞(iPS細胞)など万能細胞を使った治療にも成果を応用できる可能性がある」と話す。
iPS細胞の臨床応用でかなり期待できるこの脊髄損傷の治療ですが、痛みの加減なども考えるとまだ改良が必要ということか。
より効率的なリハビリ方法と、痛みの神経をあまり伸ばさないような治療薬を併用することが必要なんでしょうね。
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