特殊な薬でがん細胞を探し出して、中性子でがんだけをねらい撃ちにする――そんな新しい放射線治療法の実用化に、京都大原子炉実験所や大阪府立大などのチームが今春から乗り出す。小さながんが多発したり、複雑に広がったりして、手術が難しい患者に効果が期待され、今年中の臨床試験を目指す。
この手法は「ホウ素中性子捕捉療法」と呼ばれる。中性子をよく吸収するホウ素の働きを利用して、がん細胞をねらい撃ちにする。増殖の盛んながん細胞に取り込まれやすいホウ素の薬剤を患者に注射する。患部に中性子を照射するとがん細胞に集まったホウ素が核反応を起こし、細胞1個分の範囲が壊れる仕組みだ。正常な細胞にも微量の薬剤が取り込まれるが、線量の調整で周囲へのダメージは最小限にできるという。
今回の共同研究で、住友重機械工業が中性子を照射できる約3メートル四方の小型加速器も開発。照射室も合わせ、大学病院などに設置でき、原子炉の設置も不要になった。将来は建物も合わせ、数十億円で設置できる見通しだという。
また、大阪府立大とステラファーマ社(大阪市中央区)のこれまでの研究で、血液に溶けやすく、長期間保存できるホウ素薬剤を量産できる技術開発にも成功している。
同実験所の小野公二・粒子線腫瘍学研究センター長は「普及させるには、医療施設で中性子を扱える専門家が少ないことが課題だ。本格稼働を機に人材育成も進めたい」と話している。
放射線科医の領域ですかね。最近は手術、化学療法に加えて放射線療法の進歩も加速しています。昔は放射線を照射しようとしても、他の健康なところまでヤラれてしまうことが懸念されていましたが、技術の進歩によってそれも改善されました。
そしてこれは中性子。より強力に効果がありそうです。一口にがんといっても色々なケースが考えられますから、患者さんにとっては選択肢の1つとなる可能性も。
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