自治体のがん検診を受ける人が減っている。昨年4月に始まった特定健診・保健指導(メタボ健診)が足を引っ張っているという声も聞かれる。一体、何が起きているのか。
香川県小豆島町では2月19日、お年寄りや主婦らが福祉会館を訪れ、検査衣に着替えた。昨年9〜12月の胃がん検診を受けた人が前年比6割減の484人となるなど、がん検診の受診者が激減したため、町が「異例」と言う追加検診に踏み切った。保健師の楠初美さん(49)は「メタボ健診に力を入れた分、がん検診の啓発がおろそかになった」と打ち明ける。
メタボ健診は昨年4月、高齢者医療法で自治体などに実施が義務付けられ、受診率が低いとペナルティーもある。町は保健師による地区説明会を開き、約3700人の全対象者に案内を送った。一方で、がん検診は前年度行った個別案内をやめ、広報や防災無線で呼びかけただけだった。
厚生労働省によると、がんで亡くなる人は年30万人超で、死因のトップ。だが、1982年度に始まった市町村のがん検診は、健康増進法での努力義務にとどまるため、自治体の関心がメタボ健診に傾いたらしい。
「日本対がん協会」(本部・東京)の道府県支部に昨年4〜12月の受診状況を尋ねたところ、全国約900市町村から委託を受けている肺がん検診の受診者の減少は、前年同期の11%にあたる約27万人に上った。
ここまで減ったのは、メタボ健診によるもう一つの影響とする見方も強い。
メタボ健診の前身は、市町村の基本健診。職場で定期健診を受ける機会のない主婦や高齢者らも対象で、がん検診と同時に行っていた市町村も多い。ところが、メタボ健診は保険事業の運営者が実施。自営業者など国民健康保険加入者は市町村のメタボ健診を受けられるが、サラリーマンの妻は夫が勤める会社の健康保険組合で受けることになった。
福島県猪苗代町は基本健診だった時と同様に、メタボ健診をがん検診と同じ会場で行った。すると、メタボ健診が受けられないサラリーマンの妻の中には「がん検診だけなら受けない」と怒って帰った人もいた。がん検診も受けられなくなったと誤解して来なかった人もいたといい、胃がん検診の受診者は前年から500人以上減った。
東北大の大内憲明教授(腫瘍外科)は「混乱は予想されたが、ここまで影響が出るとゆゆしき事態。メタボ対策ばかりでなく、がん検診も大切で、おろそかにしないためにも両立の工夫を」と話す。
なんとまぁ。メタボリックシンドロームの啓蒙活動が裏目に出た可能性が。
でもアレですよね、確かにメタボも大事ですけど、がん検診が大事なのは変わらないわけで。両方受けてもらうような機能的なシステムづくりが出来ればいいんですけど。
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