2009年02月15日

偽りの鬱病で5500万円を詐取した社員らを逮捕する。

「ニセ鬱病」で5500万詐取…“共犯者”が明かした巧妙手口

 国民の約15人に1人が生涯に経験するとされる「鬱病」。自殺など悲劇に結び付かないよう全国での取り組みが本格化する中、鬱病になったと偽り健康保険の手当金をだまし取っていた男らが、秋田県警などに詐欺容疑で逮捕された。病気を装うためのマニュアル、大量のニセ社員…。男らの“共犯者”が産経新聞の取材に応じ、短期間で荒稼ぎした組織犯罪の一端を明らかにした。医師を手玉に取り、制度を悪用した前代未聞の手口とは−。

 「札幌市にあるアクアという小さな会社の社員が、次々と鬱病になって傷病手当金を受給している。経営実態も怪しいようだ」

 昨年、北海道や東北地方の社会保険事務局の担当者の間で、こうしたうわさがささやかれていた。

 そうした中の昨年6月、秋田社会保険事務局の担当者が“異変”に気付いた。「アクア」秋田支店長の男が「鬱病になった」として手当金の支給を同事務局に申請し、事務局は「支給決定通知書」を男の自宅に送付した。ところが、「転居先不明」として書類が返送されてきたのだ。

 うわさを耳にしていた担当者は不審に思い、秋田支店が入居するアパートの一室に出向いてみた。すると案の定、人の出入りは一切なく、営業している気配もなかった。

 秋田支店長の「転居」の理由は不明だが、書類返送の“ヘマ”が端緒となり、事務局から被害相談を受けた秋田県警が内偵に着手。今年1月下旬に立件にこぎつけ、組織的な犯罪が明るみに出た。

 詐欺容疑で逮捕されたのは、札幌市豊平区の雑貨販売業「アクア」代表社員、S(41)、同市東区の無職、N(28)ら3容疑者

 3人は共謀し、昨年3月中旬、秋田社会保険事務局に会社の実体があるように装って虚偽の届け出をし、アクア秋田支店として健康保険の適用を受けた。支店長の七尾容疑者は5月に鬱病で働けなくなったと申請、同事務局から1カ月分の傷病手当金約66万円をだまし取った疑い

 秋田県警は内偵段階で札幌のアクア本店も実体がないと断定し、ほかに被害のあった北海道、青森、宮城、福島の各警察と共同捜査班を設けて捜査した。

 これまでの調べで、アクア社は平成18年2月から昨年12月までの間、7都道県の社会保険事務局から計約5500万円をだまし取った疑いが浮上している

 S容疑者らが詐取した傷病手当金は、欝病を含め病気やケガで休職を余儀なくされた中小企業サラリーマンの救済制度である。社員が払う健康保険料が原資となっている。

 社会保険庁の地方組織である社会保険事務局(組織改正のため昨年10月から全国健康保険協会に部門移管)が窓口。申請には休職前の勤務状況を証明するタイムカードや実際の月給を示す賃金台帳の写し、医師の傷病証明などが必要だ。

 申請できる月給の上限は121万円で、基本支給額は日給の3分の2。10日前後の審査を経て、休職者の口座に入金される。

 申請書類の中で最も重要なのが医師の傷病証明だが、S容疑者はいとも簡単に突破している。

 「医者をだますのなんて簡単だ

 秋田県警の取り調べに、こううそぶいているという。

 その武器は“欝病なりきり”マニュアルだった。

 厚生労働省が作成した欝病対策の「国民向けパンフレット」によると、欝病とは一般的に意欲の低下や不眠、倦怠感などを伴う病気で、自殺原因にもつながるという。10年前の同省の調査では、欝病を含む気分障害の総患者数は44万人で、年々増える傾向にあるとされる。

 S容疑者はこうした情報をインターネットや書籍で入手し、紙1枚にまとめていたのだ

 県警が押収したマニュアルには鬱病の症状が列挙され、アクア社の“ニセ社員”が診察を受けに行く際には内容を覚え込ませた。ときには実技指導をし、総合病院より開業医に行くようにも指示。その結果、大半のケースで欝病と診断させることに成功したというのだ。

 「確かに、数人でチェックする総合病院に比べて一般的に開業医はチェックが甘い。最近は、同業者との競争激化で患者に迎合する傾向もみられる

 北海道内の精神科医はこう話す。S容疑者は病院の実情をよく把握していたようだ。

 北陸地方の別の精神科医は、こんな打ち明け話をする。

 「鬱病はレントゲンなどで発見するようなことはできず、結局、患者側の言い分に頼るのがほとんど。病気の特徴としても、症状の初期と治る直前に自殺するケースが多いため、初診の際に『鬱病ではありません』と言い切ることはなかなかできない

 “ニセ社員”の一人で、昨年8月に「東京支店長」となった男性(39)は事件発覚後の2月上旬、産経新聞の取材に応じた。男性は秋田県警に任意で事情聴取されたという。

 −−S容疑者と出会った経緯は?

 「昨年8月ごろに、S社長のもとで働いていた自分の幼なじみから電話で、『おいしい話があるよ』と声をかけられ、今住んでいる渋谷のアパートを東京支店にしただけ」

 −−具体的にどんな指示を受けたのか

 「自分はマニュアルはもらわなかったけど、医者に診断してもらう際には鬱病の症状を言うように指示された。『もし医者が診断書を書いてくれなかったら、おれが説得する』とも話していた」

 −−病院はどうやって探したのか

 「自分で探すように言われたが、総合病院よりも開業医を選ぶよう指示された」

 −−だまし取った金額は?

 「2カ月分で35万円くらいかな。最初は半信半疑だったけど、実際に手当金が入金されて驚いた」



 許さん。

 これはもう悪質極まりない手口です。そりゃ肺炎とか胆嚢結石とかと違って、精神科の領域は患者の言い分に準じて診断が下り、治療として薬が処方されます。鬱病の知識さえあれば誰でも診断されるでしょう。決してこの悪質な詐欺は頭が良いから成功したわけではありません。ただ非人道的ともいえる悪意がないと出来ないだけです。

 こういうことが横行してしまうと、実際に鬱病になった社会人を補償することが難しくなってしまいます。福祉を根底から揺るがしかねないほどの悪質な詐欺です。ホント何考えてるんでしょうかね。長期の実刑でも更正しないんじゃないですかね、こういう人は。

 やはり医学的に、鬱病も何らかの検査で診断できるようになればいいんですけれども…。難しいですね。最初から患者さんが鬱病を騙ってるんじゃないかと疑うような診療も嫌ですし。

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posted by さじ at 05:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 精神
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