金沢医科大の正木康史准教授(血液免疫制御学)らの研究グループは二十三日までに、免疫性の難病シェーグレン症候群の一部とされていた中に、抗体タンパク質の増殖で発症する新たな別の疾患が含まれていることを突き止めた。今後、適切な診断法を確立し、早期に症状の進行を防ぐ。研究成果をまとめた論文は英科学誌ネイチャーなどに紹介された。
シェーグレン症候群は口や目が乾燥し、重度になると肺や肝臓などの内臓疾患も併発する難病で、国内の患者数は十万―二十万人といわれている。同症候群の中にはミクリッツ病と呼ばれ、特に涙腺や耳下腺の腫れがひどくなる疾患があるが、従来は同症候群の一部と考えられていた。
正木准教授らは、ミクリッツ病が同症候群とは別の疾患ではないかと考え、二〇〇四(平成十六)年に金大や富大を含む全国の専門家による検討会を設置。全国の病院から八十四症例を集めて解析した結果、同症候群と比べ、「IgG4」と呼ばれる抗体タンパク質と、それをつくる細胞の増殖が分かった。
さらに、別の疾患である自己免疫性膵炎の中でも特に「IgG4」の数の多くなる症例があるため、これらをまとめて新たに「IgG4関連リンパ増殖性多臓器疾患」として提唱することにした。
同検討会によると、同疾患はステロイドの投与により、腺機能の荒廃や多臓器不全の進行を防げるという。一方、副作用に注意が必要で、同検討会は適切な投与量や時期などを研究し、治療法の確立を目指す。
シェーグレン症候群は、もともと、関節リウマチに乾燥性角結膜炎を合併した疾患として報告されていましたが、70年ほど前にシェーグレン症候群として分類されました。
そして今回、そのシェーグレン症候群の1つと思われていたものから、「IgG4関連リンパ増殖性多臓器疾患」として分類されることになりました。膠原病はもともと原因不明のものが多いので、新たな発見によって別の疾患であるといえたわけです。
シェーグレン症候群は、唾液腺や涙腺などの外分泌腺で、自己免疫によって炎症細胞の浸潤が起こり、外分泌腺の腺房が破壊され、分泌機能が低下する疾患です。
よって症状としては口の乾燥、眼の乾燥などの他、腺外症状としてはリンパ節腫脹や間質性肺炎、原発性胆汁性肝硬変、遠位尿細管性アシドーシス、橋本病(慢性甲状腺炎)などを合併します。
また、シェーグレン症候群は関節リウマチや全身性エリテマトーデス、全身性強皮症といった膠原病を合併します。すなわち多関節炎やレイノー現象などの症状もみられます。
特徴的な検査は、自己免疫疾患による高γグロブリン血症、リウマトイド因子陽性、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体の出現などです。眼の乾燥を調べるSchirmerテスト、唾液腺の分泌を調べるガムテストなどがあります。
乾燥症状だけだとステロイドは適応となりませんが、腺外型などに対しては必要に応じてステロイドを投与します。今回挙げられた疾患であるIgG4関連リンパ増殖性多臓器疾患でもステロイドの投与が治療法の1つになっていますね。
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おそらくされると思うので確認してみて下さい。