福岡大病院(福岡市城南区、内藤正俊院長)は23日、救命救急センターに搬送されるなどした入院患者23人から、ほとんどの抗菌剤が効かない耐性菌「多剤耐性アシネトバクター」を検出したと発表した。
いずれも病院内で感染したとみられる。これだけ多数のアシネトバクターの集団感染が国内で確認されたのは初めてという。厚生労働省は国立感染症研究所の専門チームを派遣し、感染経路などを調べる。
アシネトバクターは健康な人が感染しても発病しないが、抵抗力の弱い人が感染すると肺炎や敗血症などを起こすことがあるという。
発表によると、2008年10月20日〜今月15日、いずれも重症の内臓疾患などで入院していた10歳代〜80歳代の男性患者15人、女性患者8人のたんなどから検出。うち男性3人、女性1人が死亡した。男女2人は感染と死亡は無関係と判明したが、ほかの男性2人については「死因となった可能性は低いものの、断定はできない」とし、さらに詳しく調べる。
同病院は当面、救命救急センターでの患者受け入れを中止する。感染者のうち22人が人工呼吸器を装着していたが、消毒して再利用していた人工呼吸器の装着器具からもアシネトバクターが検出されたため、6日から共用をやめた。
普通の人なら何でもないのに、免疫力の低下した高齢者や免疫抑制剤を使っている人など、弱っている人に対して猛威を振るってしまう、それが日和見感染症です。
最近この多剤耐性のアシネトバクター菌も注目を浴びるようになってきましたね。MRSAだけでなくアシネトバクターに関しても注意しなければならない…。人は菌の変異と一生戦い続ける運命にあるのでしょう。
以下、アシネトバクターに関するニュースです。こちらも併せてどうぞ。
医療施設に広がる新たな脅威、薬剤耐性菌「アシネトバクター・バウマニ」
「アシネトバクター・バウマニ」と呼ばれる薬剤耐性の強力な致死性細菌が、病院など医療施設で新たに広がりつつあり対策が必要だと、ギリシャの生物医学研究機関が18日、医療従事者らに警告を発した。
これまで院内感染に関する世界の注目は、圧倒的にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に注がれてきた。しかし、「アシネトバクター・バウマニ」と呼ばれる耐性菌による脅威が拡大しつつあるとの研究報告が、英医学雑誌「ランセット(Lancet)」に掲載された。
この細菌の流行を抑制するのはきわめて難しいことが証明されているという。またデータによると、アシネトバクター・バウマニに感染した場合、3分の1に近い感染例で、最先端の抗生物質に対する耐性がみられた。
この論文報告を行ったアテネ(Athens)の生物医学研究機関アルファ・インスティチュート・オブ・バイオメディカル・サイエンス(Alfa Institute of Biomedical Sciences)の2研究者は、「多剤耐性株が引き起こす施設での流行が公共衛生問題として拡大している」と語る。
2004年の研究によると、米国での感染例2万4000件のうち、感染者の34%が病院内で血流感染して最終的に死亡した。集中治療を必要とした感染者では死亡者の割合は43%とさらに高かった。
研究者らは、医療機関での緊急対策は不可欠で、細菌を制圧する薬剤や薬剤の組み合わせを突き止めることが必要だと訴えた。
アシネトバクター・バウマニは健康な人を襲うことは少ないが、入院中の重症患者らの間でよく発見される。高齢者や重篤な基礎疾患を持つ患者、免疫システムの衰弱している人、大きな外傷性障害ややけどのある人などが感染しやすい。また、手術後の人やカテーテルや人工呼吸器の使用者も感染する可能性が高いという。
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