独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、ヒトをはじめとする動物の細胞に感染、梗塞、壊死などのストレスを加えると発現するC型レクチン「Mincle」が、病原性真菌マラセチアの受容体であることを発見しました。これは、理研免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)免疫シグナル研究グループの斉藤隆グループディレクター、山崎晶上級研究員らと大阪大学免疫学フロンティア研究センター、千葉大学真菌医学研究センター、産業技術総合研究所糖鎖医工学研究センターとの共同研究による成果です。
研究グループは、ストレスによって強く発現が誘導されるタンパク質Mincleに着目し、Mincleが何らかの形で生体異常の感知に関与していると考え、機能解明を進めてきました。2008年9月には、Mincleが自己組織の損傷を感知し、炎症を誘起する受容体であることを同定しました。
今回、Mincleが、外界から侵入する微生物(非自己)を感知する受容体としても働く可能性を考え、さまざまな病原性真菌を調べた結果、Mincleがマラセチア属の真菌を特異的に認識することを見いだしました。
さらに、Mincle遺伝子欠損マウスを作成し、マラセチアに対する応答を調べた結果、マウスにマラセチアを投与して誘起される炎症反応が、Mincle遺伝子欠損マウスでは有意に減少することを見いだしました。
マラセチアは、癜風、脂漏性皮膚炎などの皮膚疾患の原因菌として知られ、また、アトピー性皮膚炎の増悪因子や、乳幼児の致死性敗血症の原因菌としても報告されてきました。今回の結果から、Mincleが、マラセチアを感知して炎症性サイトカイン産生を促す活性化受容体であり、マラセチアに対する生体防御に重要であることが強く示唆できました。
マラセチアを特異的に認識する受容体の発見は世界で初めてで、Mincleの機能解析をさらに進めることで、マラセチアによる皮膚疾患、乳幼児の致死性敗血症、アトピー性皮膚炎などの治療につながることが期待されます。
澱風に対する治療だけでなく、いろいろな疾患の治療につながるかも。特にアトピー性皮膚炎に対する治療になれば凄いです。
澱風とは?
熱帯、温帯地方でよくみられる疾患です。日本では通常夏に多くみられ、頚部、胸部、背部などに好発します。時に肘や顔に出ることもあります。
症状としては、毛包を中心として淡い褐色斑がみられ、徐々に増大します(黒色澱風)。互いに癒合し、大きな褐色斑となります。
褐色の病変が逆に色素脱失を生じて、白色になることもあります(白色澱風)。
病変は平坦で、正常皮膚が色素の変化を呈しただけのようにみられますが、爪などで擦ると細かい落屑がみられ、「カンナ屑現象」と呼ばれます。この落屑をKOH直接鏡検でみると、澱風菌が証明されます。痒いといった自覚症状は通常はないことが多いです。
検査として特徴的なのは、Wood灯試験。病変にWood灯を当てると黄橙色にみえます。
抗真菌薬で簡単に治療できるので気になる方は皮膚科へ。
参考;標準皮膚科学