体の筋肉が勝手に収縮を起こし意思通りに体を動かすことができなくなってしまう神経難病「ジストニア」は、大脳基底核から発する信号の異常によって起きることを、自然科学機構・生理学研究所の研究者たちが突き止めた。
知見聡美・助教、南部篤・教授と米マウントサイナイ医科大のプラニパリ・シャシドハラン博士らは、ヒトのジストニアの原因遺伝子を組み込んで新たに開発したモデルマウスを使い、脳の中の神経細胞の働きをマウスが覚醒した状態で調べた。
正常なマウスは、運動の司令塔である大脳皮質運動野から適切なタイミングと強さの信号が出ることで、筋肉が正常な動きをする。この運動野の働きを調節しているのが大脳基底核で、運動野の活動を抑える信号の強さを変えることで、運動野が出す運動の指令の強さやタイミングの調節を行っている。
モデルマウスによる研究の結果、大脳基底核からの信号に異常が見つかり、不必要で意図しない筋肉の運動を抑える仕組みが弱まっていた。研究チームは、これが本人の意図しない筋収縮を生じさせる根本的なメカニズムとみている。
モデルマウスによる研究をさらに進めれば新たなジストニアの治療法開発につながる、と研究者たちは言っている。
ジストニアは、国内で約2万人の患者がおり、薬物や手術による治療が行われているが、根本的な治療法はまだ見つかっていない。
ジストニアになると、手の筋肉や首の筋肉が過剰に収縮してしまいます。
見た目的に気にする人もおられますし、仕事上の作業ができなくなってしまう人もおられます。
社会的にかなり負担の大きいジストニアという疾患ですが、ボツリヌス療法や薬物療法でも完全に治すことはできません。この研究から治療が出来れば、生活を営む上での苦しみが除かれるでしょう。
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